ソフト化されていない1992年の映画です。8月に開催された東京の上映会で観てきました。
先日は京都で上映があり、このブログでのお知らせで知ったという関西の3名のかたが「行ってきましたよ~」と教えてくれたので、ほかにも何名かご覧になられたかたがいらっしゃるかな、と思っています。
(このあとは以下の場所で観られる機会があるようです)
・9月24日(土):北九州
・10月1日(土):横浜
・10月8日(土):東京・錦糸町
『ラーマーヤナ』はとても長く濃い話で、わたしは物語をキュッとまとめたレグルス文庫でしか読んだことがなく、そのほかには映画『バーフバリ』を観たあとに意味や解説を追って知ったくらいでした。
わたしが毎朝読んでいる『ヨーガ・ヴァーシシュタ』は『ラーマーヤナ』を土台にしたものですが、ラーマとヴァシスタ仙の病みっぷり(?)にだけどっぷり馴染んでしまい、それ以外のところはさっぱりです。
レグルス文庫はラーヴァナ王の心情を丁寧に抜き出していて、葬儀の場面は文字で読むとまた感動もひとしお。
いずれにしても長く濃い話なので、いろんなバージョンで見たくなります。今回のアニメ映画版では、これまでのインプットでは強く印象付けられていなかった以下の部分をたっぷり感じることができました。
- 猿族、鳥族、森の生き物とラーマたちの関係
- ハヌマーンのスーパーモンキーっぷり
日本アニメのクオリティで製作されているので自然の描写が壮大で素晴らしく、ヤングにはわからない喩えになってしまいますが、山や岩がたくさん出てくる場面は『未来少年コナン』のようでした。
そして今回この映画でハヌマーンのキャラクターを知り、これは超絶スーパー・モンキーだ!!! と思いました。
シータを助けに行く偵察時の登場の怪しさと、パワフルな仕事をするときにバチっとスーパーマンになる、TPOにあわせて業務をこなすギャップの振れ幅に惚れました。
救出の前にメッセージを伝えに現われたハヌマーンに対して、シータが普通に「なに? この猿ふうの人、キモっ」という反応をする、あの場面の正直な表情もたまりません。
敵になるラーヴァナ側のキャラクターが魅力的に描かれていたのも良かったです。映画はラーマの即位後の話はなく、ラーマのその後の性格のヤバさまでは描かれません。そこカットするよね。(笑)
わたしはラーヴァナをとても魅力的な男性だと思っているので、嫉妬でラージャ・ヨーガどころではなくなるラーマの様子も見届けたかったのですが、この要素を入れると一気に大人向けになってしまいます。
それにしても。
『ラーマーヤナ』は、敵と味方の背景の描かれかたがいい。いいんですよねぇ。
これはハヌマーンがモデルとされている孫悟空が登場する『西遊記』とも共通していて、戦いや葬いを通して魂の行き先や義務・役割の考え方を教えてくれます。(義務と行為は『バガヴァッド・ギーター 』でも繰り返し説かれるテーマです)
インドの叙事詩は読もうと思うととんでもなく長いので、観やすい絵の映画を通じて物語に触れることは、個人的におすすめな学び方です。
そしてこれはものすごく個人的な連想による全く別の発見なのですが、中勘助ってすごいな! と思いました。
わたしの脳内で、序盤のラーマ&シータの婚礼までのアニメ映像と中勘助の小説『提婆達多』の文字による婚礼の描写が重なりました。あの時代に中勘助が映像的な描写をやってのけていたことに畏れを抱きました。
中勘助の『提婆達多』はいつか読書会で取り扱いたいと思っている作品なのですが、自分がそう思った理由がこの映画を観たらわかりました。
上映会でいただいたパンフレットです。