マーク・カン先生によるヨーガ指南書。
昨年この先生の存在を知るきっかけがあって、ミーハーな気持ちで本を買いました。
とても充実した内容で読み応えのある本でした。訳もすばらしくて。
パンデミック以降はヨガクラスを開催するにしても、フォーカスポイントは自然に「免疫力」へ寄っていく。そんなタイミングで手にしたため、解剖学的視点・ヨーガの科学・アーサナの効用、さまざまな角度から練習と生活習慣について考え直すきっかけになりました。
呼吸のパートでムドラーについてしっかり説明されている点もすばらしく、アーサナは上級者向けのポーズが多いです。その各ポーズのグループ分けの冒頭ページにある短い言葉がすごくよくて。例えばこんな感じです。
後屈のポーズ
活発で外を向く後屈のアーサナは開放的なので、私たちは人生を十分に受け入れるように、心を開き、体を外に向けることができます。後屈のポーズは、呼吸が自由に動けるような空間を胸のなかにつくり、吸息を促します ━━ 身が軽くなる感覚を生み出すだけでなく、何であれこの宇宙を私たちを待ち受けているものに対応するための、頼みの綱を与えてくれるものです。
(191ページ)
心理的効用の面で、これはほんとうに実感すること。身体の中から理解が湧いてきます。
「アーサナを実践するメリット」の80ページで語られる以下も、これは練習する人を見ているときに感じる点とも重なって、なんだかいいなと思いました。
アーサナが正しく実行され、意識をもって実践されるとき、動きはなめらか、体は軽く、心に自由な感覚が生まれます。アーサナは個人の意識の探求です。
自分がどう動き、呼吸するかを意識していると、初心者でもポーズが落ち着いて優美になります。
「優美な瞬間」は経験年数と関係がない。わたしも練習している人の動きを見てうっとりする瞬間がたくさんあります。わたしが「いますごく綺麗だった」と言うと「おだててくれた」と言われてしまうのだけど、そうじゃない。ほんとうに美しい瞬間がある。
マーク先生は、説明しようがないことに無理に言葉を並べません。
瞑想は教えられるものではありません。眠ることを学べないのと同じように、瞑想は学べないのです。
(228ページ)
「眠ることを学べないのと同じように」の喩えで、意識の状態は起こるもので学ぶものではないということをさらっと説明されている。
わたしは昨年この本を手にしてから食生活を変えたり、瞑想のタイミングと場所を固定したり、ステイホームで移行しやすくなった部分は積極的に乗っかって、学び直しの参考書にしています。
- 作者:マーク・カン
- 発売日: 2014/09/22
- メディア: 単行本
マーク先生のことは、昨年夏にオンライン授業で再会したかつてのルームメイトとの交流で知りました。友人はミラノでヨガ講師をしているのですが、このマーク先生も現在はミラノが拠点。友人の Instagram に登場していたのだったかな……。
なんだかすてきな先生だなと思っていたら、本が出てた! うわお。という経緯。
背骨がとってもしなやかで、服装もさりげなくて、横山やすし級の太ブチ眼鏡をかけたままぐわーんと動いていらっしゃる。それがどうにも魅力的でファンになったのでした。
▼マーク先生の Instagram