うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

密教ヨーガ ― タントラヨーガの本質と秘法(第一篇) 本山博 著

「うちこちゃん絶対この挿絵、ドツボだから」と言ってアシュタンガの先生が貸してくれました。以前も挿絵だけちょろりと紹介したことがあります。第一編「タントラヨーガの行法」をご紹介します。
著者さんは最近は「陰ヨガ」の参照先として知られていますが、沖先生と4歳違いで現在もご存命、85歳。この本は昭和53年の本なのですが、たまらんツッコミどころが満載です。基本的に今のようにヨーガ用語が普及していない頃の専門用語なので「ヨーガズートラ」「バンドハ(バンダのこと)」「ウパニシャット」のような綴りで、「ヨーガズートラ」の文字を見ると、どうにも植木等の顔が浮かんでしまう。
著者さんがサッチァナンダ師から教わったヨーガを中心とした、チャクラ祭りな構成です。

<13ページ タントラヨーガにおける三つの身心 より>
 それでは、この三つの心身とはいったいなんでしょうか。
それは次の三つを指します。
 (1)肉体とその心(肉体と結びついて働く心=意識)
 (2)微細身とその心(感情が主役を演ずる)
 (3)原因身とその心(叡知がその主役を演ずる)
 肉体とその心は、この三つの身心のうちで、この世にあって働き、存在するものであり、さきほどお話した陰と陽にしたがえば、陽にあたるものです。この陽の部分、形ある部分は、肉体的感覚や思考ではとらえられない、陰の部分である微細身や原因身によって支えられ、その生を保存することができるのです。

この(2)と(3)の表現は、うまいなぁと思いました。「〜がその主役を演ずる」というのも、「客観的主語な感じ」をうまく表現している。


<38ページ アーサナを行うための一般的注意事項 より>
 (15)腸にガスがたまっているときとか、血液が濁っているときには、逆立ちのアーサナは決して行なわないこと。毒素が脳内に入って傷害をおこすことを防ぐために、必ず守ること。

わたしがついアホな妄想ばかりしてしまうのは、このせいかも。


<38ページ パワンムクターサナ(Pawanmuktasana、邪気を払うアーサナ)とは何か より>
 パワン(pawan)は風、ムクタ(mkta)は解き放つという意味です。風、邪気を追い払うアーサナで、特に、関節の部分にたまる邪気を払うのに効果があります。

(中略)
 
 ナディは経絡と同じものと考えられますが、経絡は結合組織でできていて、その中は体液に満たされています。そして、経絡の中の、気のエネルギーの流れがつまりやすいところは、結合織の中でも、靱帯や骨が入りこんでいる関節部分なのです。

アーサナに入る前に、じっくり足首手首などの回るところを中心にじんわりと刺激を与えていく準備運動のような動きの総称がこれです。


<54ページ 背部を伸ばすアーサナ(Paschimottanasana パスチモッタナアーサナ) より>
(解説からつまみ出し引用)
・霊的修行者は、かなりの時間、この最後の姿勢で、完全に弛緩したままとどまることを心がけるべきです。
・このアーサナは、古くから、霊的覚醒にとって重要なアーサナとして高く評価されています。

チャクラについて、カフェなんかでスピリチュアルに語りたいOLのみなさんは、とりあえず軽く前屈してから出かけてみては。


<60ページ 魚のアーサナ(Matsyasana マツヤアーサナ) より>
【効果】このアーサナは、腸がほかの腹腔臓器といっしょにのばされるので、大小腸の病気にたいへん効果があります。便秘の人は、コップ3杯の水を飲んでからこのアーサナを行なうと、すっきり治ります。

【呼吸】最後の姿勢で、ゆっくり深く呼吸します。扁桃腺炎、咽喉炎にかかってい人は、シートカリプラナヤマ(※註)を、最後の姿勢で行なってください。

【※】シートカリプラナヤーマ(Sheetkari Pranayama)
 このプラーナヤーマは、シータリプラーナヤーマ(舌を口の外に出し、舌の両側を内側に丸めて舌で細い管をつくり、この舌でつくった管を通して息を吸う呼吸法で、全身を冷やすのに効果があります)に似ていますが、違うところは、舌の位置です。このシートカリプラーナヤーマでは、舌は後上方に曲げ、舌の裏側を上口蓋につけます(ケチャリムドラに似ている)。次に歯をくいしばり、両口唇をできるたけ開きます。呼吸はヨギの呼吸を行ないます。そして、吸う息はかみしめてある歯の間から行ない吐く息は鼻で行ないます。

わたしは日々「快便なら仕事はうまくいく」というものすごくシンプルな経験による信条で暮らしているのですが、これ便利だな。


<69ページ シッダ・ヨニアーサナ(Siddha Yoniasana 女性のための成就アーサナ) より>
 右足を曲げ、その足の裏を左大腿部の上の方にぴったりつけ、右かかとを大陰唇の中へ入れます。左足を曲げて、その足を右ふくらはぎと大腿部の上におきます。次に、右足指を上げて左ふくらはぎと大腿部の間に入れます。
 脊柱を、その底部が大地に植えつけられたように、しっかりとまっすぐにしてください。

【注意】シッダ・ヨニアーサナは、女性のためのシッダーサナで、いままでは口伝によってだけ伝えられていたものです。
 どちらの足を上においてもかまいません。下着をつけないで行なうと、最上の効果があります。このアーサナは、いつもギアナムドラといっしょに行なってください。

そして通常のシッダアーサナ(シッダーサナ)の注意事項には、シッダアーサナは、男性だけが行ないます、と記載があります。


<71ページ 「ヨーガアーサナの種類と技法」末尾 より>
 さて、アーサナによってナディ、プラナの流れや血液の流れがよくなり、脊柱の歪みも矯正され、神経系やスシュムナの働きも活発になりました。つまり、身心がととのえられたわけです。これは、ラジオの修理にたとえると、機能の落ちた部分、こわれた部品を取りかえ、各部品の調節や、全体の調節が終わったところです。
 でも、それだけではラジオはその機能を発揮しません。当然ながら、電源から電気を流してパワーを与えなければラジオは働きません。このパワーを与える段階が、次にお話するプラーナヤーマです。

ヨーガの昔の本で、「ラジオ」ってよく喩えに使われる。わたしは普段IT仕事をしているけれど、「箱もできました、連結の導線も整いました、さて」のところで、よくヨガっぽいと思うことがある。


<76ページ ナディを浄めるプラナヤーマ(Nadi Shodhan Pranayama ナディ ショーダン プラナヤーマ) より>
 よくあることですが、吸気をゆっくりしすぎたために呼気が速くなりがちです。そのとき、無意識のうちに呼気の長さを速く数えて、数だけ吸気と一致させてしまうことがあります。そんなことがないように注意してください。
 少しでも不快な感じがしたら、呼気、吸気の長さを短かくし、楽にできるようにします。

あるー! 自分のときはわからないのだけど、人のをなにげにカウントしていると、よくわかる。


<80ページ 霊的呼吸法(Ujjay Pranayama ウジャイ プラナヤーマ) 【効果】より>
 不眠症に悩む人は、ケチャリムドラをせずに、この呼吸法を行なうと効果的です。ただし、シャバアーサナ(屍のアーサナ)の姿勢をとったままがよいでしょう。

不眠症の同僚に教えてあげなくちゃ。


<91ページ ギアナ・ムドラ(Gyana Mudra)とチン・ムドラ(Chin Mudra) 【効果】より>
このムドラは、パドムアーサナ、シッダアーサナなどの瞑想のアーサナを、完全に、またより強力なものとします。
 というのは、マニプラから吸収されてまず肺に達してそれをコントロールし、続いて肺経を通って親指に達する気のエネルギー(プラナ)は、親指の先端近くにある肺経の井穴から、その一部分を放射されるわけですが、親指と人さし指を、ギアナとチンムドラのように接触させていると、この放射されているエネルギーが人さし指の大腸経の経絡に移行し、第一経絡である肺の中を流れている多量の新鮮な初癸のプラナが失われるのを防ぎます。
 以上の説明は、わたしの長年のヨーガ実修の体験にもとづくものですが、インドでは次のように説明されています。
 各指は、それぞれ象徴的な意味を持っていて、小指はタマス(暗愚、不活発、無気力)、薬指はラジァス(行為、活動、激情)、中指はサットバ(純粋、知恵、平和)をあらわします。人さし指は個我(魂)を、親指は普遍的な宇宙意識をあらわします。ギアナ、チンの両ムドラで、人さし指と親指をくっつけるのは、個の魂と、宇宙意識の統一をあらわしているわけです。

(註)ヨーガによると、物質的宇宙の根源には、原物質、原宇宙ともいえる、まだ顕在しないプラクリティがあって、三つの性質(グナ)を持っています。それがタマス、ラジァス、サットバの三つのグナです。プルシャ(純粋精神)の照見によって、この未分化状態にあった三つのグナがおたがいに動きだし、かかわりあい、作用し結合しあって、物質的宇宙が顕れたといわれています。

この5本指の意味、なんとなく好きなんです。指を押すと気持ちが落ち着いたり元気が出るなぁ、と思っていたのとシンクロするから。


<107ページ ムーラダーラチャクラの覚醒法(Manduki Kriya マンドゥキ クリヤ) より>
あるチャクラを目覚めさすのに、まず直接それへの精神集中を始めるのでなく、そのチャクラと密接な関係にある、反対の極に精神集中を行ってそれを刺激し、次に、本命であるチャクラそのものに精神集中を行うわけです。
 これは、針灸の治療で、異常な箇所と密接な関係にある、正反対の体表部分にまず針の強い刺激を行ない、そうしたことによって気あるいは、プラナの流れや各チャクラ間の全体のバランスをとりながら、ある点と臓器、あるいはあるチャクラの活性化とその機能改善を、強力にすすめることができると考えられます。

こういう中道探しのような過程で身体を目覚めさせていく理論、面白いですよね。よくわからない自分探しのためのあんなことやこんなことよりも、よっぽど実用的。


<110ページ バッタのアーサナ(Shalabhasana シャラブハアーサア) より 項目の一部を抜粋>
【精神集中】ヴィシュダチャクラに集中します。
【効果】このアーサナは脊髄の下部を強め、心臓の働きを強めるばかりでなく、坐骨神経の機能も高めます。

坐骨神経痛の同僚に教えてあげなくちゃ。


<115ページ マニプラチャクラの覚醒法2 ── トラタカ(Trataka凝視法)【効果】より>
「目は心の窓」といわれますが、これは心の出入口ということでもあり、目は心に密接に関係しているのです。目が固定され、動かずにいると、心もその通りになります。

出入口の位置が安定しているというのは、基本設計としてとっても大事ね。


<121ページ ヴィシュダチャクラの覚醒法【アナハタチャクラのために】より>
ヴィシュダチャクラよりも上位にあるアジナを最初に活性化し、目覚ます必要があるのは、アジナの項で述べたように、一つはアジナを目覚まさずに下位のチャクラを目覚ますと、そのチャクラのもつカルマに、ヨーガ実修者が打ちかつことができず、危険が多いからであり、もう一つの理由は、アジナとムーラダーラ(クンダリニー)が目覚め、ムーラダーラが目覚めなければアジナは目覚めないという密接な関係にあり、さらにアジナ覚醒法は、ムーラダーラを目覚ます、アシュウィニムドラを含んでいるからです。

下のほう(下位チャクラ)に詳しいのだけどなんとなく暗い印象の人とか(一緒にいると下に引っ張られる感じ)、ほんとよくわかんないんですよね。ハートが持ち上がってない。



挿絵イラストがとても昭和ですてきなのですが「松本勇」さんとクレジットに記載がありました。
そしてこのお名前からたどり着いたこのサイト、アートワークがたまらん本ばかりです。


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