うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

パワンムクタ・アーサナ

意外とこの名称が知られていないので、書きますね。
名前を知らなくても、「準備運動」として足の指の間に手の指をいれて足首を回したり、手首を回したり頸をいろいろな角度から伸ばしたりという動きを取り入れているクラスは多いですから、事実上みんなけっこうやっているアーサナです。
先に、以前紹介したことのある本山博氏の「密教ヨーガ ― タントラヨーガの本質と秘法」からの引用をもう一度。

<38ページ パワンムクターサナ(Pawanmuktasana、邪気を払うアーサナ)とは何か より>
 パワン(pawan)は風、ムクタ(mkta)は解き放つという意味です。風、邪気を追い払うアーサナで、特に、関節の部分にたまる邪気を払うのに効果があります。


(中略)


 ナディは経絡と同じものと考えられますが、経絡は結合組織でできていて、その中は体液に満たされています。そして、経絡の中の、気のエネルギーの流れがつまりやすいところは、結合織の中でも、靱帯や骨が入りこんでいる関節部分なのです。

邪気とかそういう話になるとそっち方面へ興味をそそられてしまう人がいますけれども、わたし自身はそういう方面について書く気がないので、いつものように物理的に説明します。
今年の夏に、いわゆる「健康ヨーガ」という分類をされることがある佐保田ヨーガ、沖ヨガを学んだりおさらいしたりしてきましたが、そこで確認してきたこと。佐保田ヨーガも沖ヨガも、パワンムクターサナをしっかりやる。そこがすばらしい。



これをわたしの言葉で定義すると


「脳みそから伝達しにくいところを意識する準備運動」です。


骨や筋肉を動かすアーサナに入る前に、神経の存在を意識することをやっておくかおかないかで、その後の奥行きが格段に違ってきます。
ものすごく根本的なところまであえてさかのぼると、アーサナは瞑想にはいる前のプロセスとして位置付けられていますが、普段の生活に取り入れられる「ヨガ的な運動としてのヨガ」においてはそこはもういちいち語らないですね。それでいいんです。
そこであえて、この重要性をわざわざ書いてみたくなったのが「パワンムクタ・アーサナ」です。


先の「ものすごく根本的な〜」の話をばっくり書くと、瞑想はより繊細なところにアプローチする作業だから、それより粗雑にあるところを先に動かしておきましょうね、ということなんですね。「疲れさせてしまってからにしちゃいましょう」でもいいです。わたしはそれもアリと思っています。
とにかく身体の部分の中に意識を向けていくにも、 肉 > 骨 > 神経 の順に、伝達の粗雑微細の距離がある。そういう意味で、「脳みそから伝達しにくいところを意識する準備運動」といっています。


これを「先にやる」のが実にいい。と思っていて、そういう面で重要視しています。
骨と肉を大きく動かしはじめちゃったうえに呼吸のどうのこうのが入ってくると、気配りの範囲の天井はすぐに下がってくるからです。
今日は自分なりにこれをやっているというのがいくつかあるなかから、「これは慣れない人でも感じやすいんじゃないかな」という特選のものを紹介します。


■手首のパワンムクターサナで神経の存在を感じるプロセス

猫のポーズの体勢から



片手首だけくるっと中指が内側に来るように、手のひらをかえす。
ここでじわーっと少し体重をかけていきます。



うちこは左手のときにたまに見られますが、小指が釣上げられた魚のように、ピクピクしたりする。
これは日によって違う。右の小指は日々のタイピング・アーサナで Enterキーを押すのによく使われているから、ピクピクしない。
左の指は、自分の意識の届かない別の生き物になっているときがある。
「神経伝達しにくい=意識の届かない別の生き物のような感じ」です。


この体勢から、流れでもうひとつ紹介しましょう。



■坐骨周りの神経の存在を感じるプロセス

猫のポーズの体勢で、足をそろえます。



片脚をまっすぐ前に出し、つま先を立て、アキレス腱の張った状態にします。



息を深くフーッど吐きながら
 ・のど仏を引いて二重あごにし
 ・鼻先を見るように目線もとことん中へ
 ・立てている膝側に50%以上体重が乗らないように注意します
 ・両手のバランスも左右均等に
 ・バランスしながら背中を丸めている状態です
 ・バランスを崩さずにできれば、おなかを引き込むと同時にすこし体重を後ろにかけます




前足のつま先が外を向いたり内を向いたりしないように



膝を立てている後ろ足のかかとが外に流れないように。足の甲の真ん中が床に着くように。


ものすごく細かいところをきっちりおさえればおさえるほど、坐骨周りにある神経の存在をものすごく感じるアーサナです。
重要なのは



この、うずまきのベクトル。これをないがしろにしてお尻だけ後ろに引いても意味がない。
それはお尻と太ももの裏側を伸ばすストレッチでしかありません。


これは、以前カポエイラを習っていたときの準備運動中に、こっそり呼吸とドリシュティ(目線)を加えてやってみて、たまたま発見しました。「ぬ、ぬわんじゃこりゃぁぁぁあ」というムズムズ感。200%身体観で書いていますが、頚椎とも繋がっているムズムズがある。



足首と足の指については、もうこれだけで一冊本が書けそうなくらいいろいろあります。
だから足裏健康法とかリフレクソロジーとか足裏の信仰とかがあるんだろうなぁ、と思います。
後になって自分の感覚が変わってきたら認識が変わるかもしれないけれど、いまの時点では「脳みそから遠い分だけコントロールしにくい部分だからだろうな」と思って観察しています。


佐保田先生のヨーガでは、足のパワンムクターサナを立ってやるのが特徴的。このプロセスは、すごくよい。
逆立ちよりも100倍ためになるけど、100倍伝えにくいのがパワンムクタ・アーサナなのよねぃ。
なので、こういうことに気づいたら、自分でやる。
自分の身体が教材です。