うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ 正垣泰彦 著/日経レストラン(編集)

立地や天候、風評で変動する店舗売上げを前年同期比で目標設定したりしない、「外部要因」をふまえた考え方がすばらしいと一時期ネット上で話題になっていた本です。義理人情浪花節みたいな目標設定の考え方って、意外となくならないんですよね。
サイゼリヤの経営は最大公約数を取りに行く場合の考え方と、無駄を省くことについての考え方がちゃんと分かれていてとってもスマート。わたしはよく行くパキスタン料理店でキッチンの人がレジまで出てきてくれる時、ほんとそこ垣根必要ないよね手を洗えばいいのだしと思うのですが、サイゼリヤもフロアの人だからこの仕事、というような分け方をしていないそうです。すばらしい。


でありながら、日本人的なところもある。スポ根要素ゼロのポップな演歌が流行歌を超えてスタンダードになった。そんな日本の企業の事例。

とにかく客観視することの重要性や指標の明確さを解いているのだけど、味についての考えかたは生き物の本性で行われているのが興味深いです。

 そうやってずっと点数化をしていると、差がつくのは「アロマ」と「フレーバー」であることに気が付いた。アロマに関して言うと、野菜不足ならレモンなど体に不足している栄養分の香りを「おいしい」と感じやすい。フレーバーについては、土や草、ハーブなど身の回りにある落ち着く香りの評価が高くなる。これが今のところの私の仮説だ。
(「大商圏向きと小商圏向きの味がある」より)

「おいしい」を冷静に分析している。


 
事実を見たときに自分の中で自己正当化する論理に曲げないことの大切さもしっかり、何度も書かれています。(太字は本文中も太字)

 飲食店経営者の中には、他店を視察した後で、「この店のやり方は大手だからできることで、ウチにはまねできない」と、初めから学ぶことをあきらめてしまったり、逆に視察した店のあら探しばかりをしたりする人がいる。厳しい言い方になるが、そんなことをやっている人は、経営者に向いていない。
(「マクドナルドは気付きの宝庫 ─店舗視察のコツ─」より)

 ありのままに見るとは、利他の精神を持ち、社会への貢献を前提にするということだ。これはきれいごとでも何でもない。お値打ち感があって、また来たいとお客様が思う店しか、商売を続けることはできないのだから当然のことだ。
(「失敗からしか学べない」より)

よく成功体験から学ぼうとする人がいるが、成功とはほとんどの場合 "まぐれ"みたいなものなので、そこから何かを学ぶのは不可能に近い。失敗を繰り返し、その経験から学んでこそ、成功に近づける。
(「失敗からしか学べない」より)

世の中のすべての結果には、当然ながら原因がある。原因は自分の中にあるという前提で実験を行うほうが、成功する可能性は高くなるはずだ。
(「商売の原点を忘れないために」より)

ウケてないこと、負けていること、スベっていることを認める誠実さを持てと。こういう本を時々読まないと、わたしもついつい事実を捻じ曲げてしまう。それにしてもここの教育システムってどんな感じなんだろう。


遠くまで行ってヨガのアシュラムに入るよりも悟りへの近道になりそうな、こんな言葉もありました。

世の中というのは常に「不連続」なものなんです。不連続な出来事に対応していくことで社会は進化していくのです。
(「サイゼリヤ農場が被災でも絶望などしていられない」より)

2011年4月の日経ビジネスでのコラムなのでこのようなトーンなのですが、視点はとても客観的。
わたしは評価軸が客観的であればあるほど頑張れるので、この考えならレストランで働いてみたい。そう思うくらい現実的なバランス感覚。

「お客様の笑顔」「お客様の声」というフレーズが一度も出てこなかったのも健全でよいなと思いました。