うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

崩浪亭主人/清修館挿話/秋果/帯広まで/河沙魚 林芙美子 著

毎晩寒いので、湯船につかりながら林芙美子作品(どれも超短編)を読むのが寝る前の楽しみになっています。

 

崩浪亭主人

こりゃ面白い。娘がカラッとしていて良い。お父さんがかわいい。30分くらいのドラマで見たい。人生の決断を人に任せていれば、こういう面白いことも起こる。

 

清修館挿話

これまたマンガのような面白さ。めぞん一刻か!
恋を覚えるのに出遅れちゃって、いろいろ大変。あっちの美人が無理だと思った瞬間から不美人が可愛く思えてくる脳内麻薬の出しかたの好都合っぷりのが、いかにも初心者でかわいい。五代くんのようにはモテてない。

 

秋果 

この時代の人は行動力もバイタリティもすごい。上海と日本を行ったり来たりする話なので、淡谷のり子さんの自伝を読んだ時と同じような脳内映像が自分のなかで再生されました。
召集令が来るだろうから結婚はやめておくとか、召集令のおかげでずるずる引きずっていた恋を終わらせることができそうだとか。ちょっと投げやりだけど楽しんでもいる。
海外まで男性を追いかけていくような情熱を持ってみたかったなぁ。(わたしのホルモンはただいま在庫切れを起こしやすい状況となっております)

しかも初めて読んだつもりが2回目だったの。11月に読んでた。けっこう最近じゃないの。すごい忘却力。

前回の感想はこちら

 

帯広まで

なにごとも時間が解決してくれるのだけど、ちょっと気になって確認したら想像以上にどうでもよかったってことって、ある。そうそう、こういうことってあるよなぁという話なのだけど、そもそもそこへ至るまでの時間がしんどいのよね。失恋は。うんうん。
と思いながら、自分を重ねる記憶がない。感情の記憶って消えていくのね。

 

河沙魚

思いのほか重い話だったけれど、昔はこういうことって今より当然あっただろうと思う。そして最初から不穏な感じがあるのに、日常の描き方は瑞々しくて、文章うますぎ! 
心は死にたがっているのに身体は生きたがっている状態を描くのが毎度ながら上手くて、この作家の書く「死にたい」はちっとも嫌じゃない。
『風琴と魚の町』でおおっ、となった日常の描きかたがこの作品でもみられた。

ラストも最高。

 

 

フーミンは矛盾を大げさに扱うことなく、日常の瞬間にある幸せを不幸と等価で扱って書き逃さない。まったくもう、粋だわぁ。

なにが上手いって、関係性を理解していくのに読み手に負担をかけないところ。頭がいいって、こういうことだと思う。