うちこのヨガ日記

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Goraksha Samhita(English Edition)  Swami Vishnuswaroop(翻訳)ゴーラクシャ・サンヒター


Swami Vishnuswaroop というかたがハタ・ヨーガの古典を英訳しKindleで出してくれているなかの一冊。正式名称は「Goraksha Samhita: Goraksha Paddhati: The Yogic Path of Guru Gorakhanath」と長い。
これまで「ハタ・ヨーガ・プラディピカー」「ゲーランダ・サンヒター」「シヴァ・サンヒター」は読んだことのある人もいたと思うのですが、今日紹介する「ゴーラクシャ・サンヒター」は、これ英文でたのか! という感じの、あきらめていた人も多いはずの一冊です。
ゴーラクシャという人物やその思想・書物についてはあまり日本で紹介されておらず、伊藤武さんの「図説 ヨーガ大全」か、あとはチャクラの解説の本山博先生の本を読むと出てきます。ハタ・ヨーガ・プラディピカーに先人として名前が出てくるので、ハタ・ヨーガのシステムの創始者とされています。この本では8〜11世紀とされています。
わたしは紙の本で「ゴーラクシャ・シャタカン」を読んで、なんだかずいぶん編集要約センスがすてきな人だわと思っていたのですが、この「ゴーラクシャ・サンヒター」でもその感じはうかがえます。(照合したら、文章が完全一致する節もいくつかありました)
ヤマ・ニヤマをのぞいたものを「6肢のヨガ」として説いた書物で、チャクラは6チャクラ。いま7が主流だとしたらアジーナ・チャクラを抜いた6つで瞑想の手引きをしています。バンダはばっちり3バンダ説明されています。アーサナは主要なものを2つあげつつ、事実上アーサナではなくムドラーとして紹介されているマハー・ムドラーはいまでいうジャーヌ・シルシアーサナの体位であったり逆転の体位も出てくるので、ハタ・ヨーガ・プラディピカーから多くのアーサナと食べ物の禁忌とヴァジローリー&アマローリー(左道的といわれるもの)を抜いた感じです。


そしてこれは訳の英語も大変わかりやすく、例としてはこんなところがすてきでした。

  • プラーナのカッコ書きに(ie."life force")というような注意書きを入れていて、英語がわかりやすい
  • バンダ+アナーヤ(bandhanaya)を bondage for fools とあっさり訳してる
  • 「reta」はふつうに訳して精液ですが、この「bindu」は精液のことを指しているだろうというところはあっさり「semen」と訳してる
  • ヨギに解放を授けるガーヤートリーというアジャパ(マントラ)について述べる節で「ただサンカルパの力を通すもの」という説明が出てきますが、そこでNoteとして補足している説明英文も以下のようにわかりやすいです。

Note : Sankalpa means a definite intention, will or vow for doing something. Say a determination/resolution to do something.

「definite intention」のところがだいじ。「とりあえずなにか!」みたいな感じで救いを求めている人が最も苦手とするところがまさにこれだったりするかもしれないので、うまい訳だなと思いました。


ハタ・ヨーガはもともと「めっちゃ男たちのもの」って感じなので、現代訳は訳す人のもつ人権意識やカルト的なものに対するジャッジみたいなものが妙なねじれを生んだりします。読み慣れていくと、感覚や体液の制御に関する表現をオブラートに包む訳は女性のわたしが読んでも「めんどくさいな」と思います。
この訳はそこのところを「もうそんな時代でもないでしょ」という感じがして読みやすいです。ねじっていない。たいへん垢抜けた感じで、クールだね! と言いたくなる訳。
インド人はITに強いので、ネット時代になったらインドへ行く機会が減らせると思っていたのですが、想像を超える速さでどんどん出てる。なかでもこの「ゴーラクシャ・サンヒター」は格別に待ち焦がれていた一冊。いい時代になったものです。


Kindle版のみです

Goraksha Samhita: Also Known As Goraksha Paddhati (English Edition)
Divine Yoga Institute, Kathmandu, Nepal (2014-12-09)

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