うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

玄奘三蔵 谷崎潤一郎 著

生きているとこういうことがあるのだから困る。読んでびっくり。内容はなんと玄奘三蔵のガンガー・サイド旅行記。現ウッタル・プラデーシュ州、ウッタラーカンド州で三蔵法師が見たものとは! じゃじゃーん。ヨーギーのクリヤ行法!!! えー。なにその展開。

 

しかも書いているのが谷崎潤一郎って豪華すぎるこの状況はどういうことなの。挿入されるリグ・ヴェーダラーマーヤナ谷崎潤一郎訳って、夢ですか? これは夢なのですか!?  だめもうぜんぜん状況に追いつけない。めちゃおもしろい。グイグイ読ませる。


スートラ・ネティをしているヨーガ行者を見て「まぢかよー」ってなってる三蔵法師の様子を谷崎潤一郎が書くと、ふむふむ。こうなるのかぁ。はあぁ(うっとり)。大正時代に「まぢかよー」なんて言葉はないので「まぢ?」から「かよー!」までのグラデーションが抑制のきいた美しい日本語で綴られる。谷崎潤一郎が書くとクリヤも「鼻の沐浴」「胃の沐浴」「腸(はらわた)の沐浴」になる。上品だ…。
しかもびっくりしながらも半分はあきれている、だんだんインド人の饒舌さにイラッとしはじめる三蔵法師の心理描写がたまらない。ページをめくる手が止まらない。わぁもう終わっちゃった。短い。

 


この短編は雑誌に掲載するために半月で書かれたのだそうで、以下の本を参照したそうです。

これを書いている間に谷崎潤一郎上野の図書館でインド人と知り合い、お話を伺ったようです。この人との話がまたヤバいくらいおもしろいく、別の物語に書いてありました
──にしても、物語の中に差し込まれる会話に見る学びの多さ、内容のわかりやすさと正しさには、ただただ驚くばかり。詩節やヴェーダをこんな短い会話で説明しきってしまいますか文豪は。という内容。


わたしの谷崎潤一郎ブームは昨年の秋でいったん落ち着いて、あとは長編では「細雪」しか残っていません。で、「細雪」って上・中・下巻でしょ、めっちゃ長いんでしょ? 読みきれるのか? と思っていたところに「あれは大丈夫。おもしろいから。読めます」と強く背中を押してくださる人がいたのでさっそく「細雪」をKindleで探していたところ……、この短編を見つけてしまいました。ほよよ。

 

 

 え、なに玄奘三蔵て…、ぽち。(←即購入)

 

 

わたくし、数えて驚いたのですがなんとかれこれ40年以上、自分はいつまで西遊記ばかり見たり読んだり聴いたり(ゴダイゴを)しているのだろうかという日々を送ってまいりました。今年から岩波文庫の全10巻を読み始めて(買ったんか!)、いま3巻まできたところでもあります。特に好きな平岩弓枝バージョンは何度も読んで涙しました。
このように、ルーク・スカイウォーカーがフォースと共にあらんとするように、ハイジがアルムの山と共にあらんとするように、わたしはいつも西遊記と共に人生を歩んでまいりました。
そんなわたしなので、"玄奘三蔵×谷崎潤一郎" の組合せを見たときには「生きていると、いいことがあるもんだなぁ」と、今日が人生最後の日でもいいような気持ちになりました。そして読み終えて思いました。昔の小説家はすごい。真髄をつぶさに拾い上げて要約して織り込んで物語にしてしまう。頭がいいって、センスがあるって、すごいのね。
わたしは今日も鼻の沐浴をして寝ます。おやすみなさい。

 

 

▼紙の本ではこれに収録されています

 

 ▼Kindle版(これ見つけちゃったの! 153円。Kindle Unlimitedにも入っています)