タイトルが最高。うまい。これはうまいとしかいいようがない気がする。
わたしは関西弁の独白文章が身体に合うようで、関西弁で書かれると脳内再生スピードがグンと上がります。この小説は、恋愛感情に溺れてタガが外れてしまった人の暴走メンタルをぎゅわーっと書き散らかした描写と関西弁の相乗効果がありすぎてすごいのだけど、その暴走の燃料というのはほんとうに恋愛感情なのだろうか。
ものすごいスピードで物語の中に連れて行かれている合間に、作為的な支配行動がどんどこどんどこ展開する。
「それを言ったら、わたしもそういうところはゼロではないし、人のことは言えないのだけど」
という標準語の思考と
「まあそれをいうたら、わたしかてそやあらへんとはいわれへんけれども、そやけどな…」
という関西弁の思考(上記の文はわたしの想像)では、やっぱりその後の展開の幅が違うのです。後者のほうが、広範囲のことを操れるように感じます。これはまずいだろという物語を書く人に関西弁を手渡してしまったら、大変なことになる。
作者は関西弁ネイティブではないのでこれはいわゆるエセ関西弁らしいのですが、そのあたりのリアリティなんてどうでもよくなるくらい、「あたまおかしいだろ×関西弁」のハーモニーが絶妙。オレオという外国のお菓子を初めて食べたときのような感覚を思い出しました。
クッキーが、黒いやんか。
しかもなんやこれ…挟んでる方も挟まれてる方も甘いやんか! なんやこれーーー!
・・・また見つけたらこうてきて。(どっかーん)
とでもいうようような、そんなノリと勢い。
この小説には、すごく粘着質な「美貌の男性」が登場します。その人物の行動・セリフ、すべてがまさにわたしもなんとか退けてきたような種類のもので、絶妙にこわい。エンタメ度が高すぎる。
こういうのは、なんというのだろう。百合ホラーとでもいうのかな。
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