うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ローマの哲人 セネカの言葉/セネカ 現代人への手紙 中野孝次 著

ルキウス・アンナエウス・セネカという、紀元前1年頃の人ではないかとされている哲学者の言葉を訳し、解説された二冊。「ローマの哲人 セネカの言葉」の次に「セネカ 現代人への手紙」を読みました。

セネカローマ皇帝ネロの家庭教師もしていた人物。ネロは、"暴君ネロ" 。義弟、母を殺害し、妻は不倫罪で自害に追い込まれ、権力争いのなかで疑いをかけられたセネカも自害。この時代のすごさはもう…話についていけないくらい。セネカは「自分の番は遅かれ早かれやってくる」と思って生きていたようで、死への考え方がどこまでもリアル。できることをやることに対してものすごく意欲的。友人知人への遺言「これやっといたほうがいいぞ」「こういうふうに考えておいたほうがいいぞ」がたくさん残されているかのようで、それは手紙仕立ての執筆? 内容が鋭い。


解説のかたは孔子道元の言葉との類似性を見出しているようなのだけど、わたしはサキャの格言に似ていると感じながら読みました。政治家として得た教訓が多く含まれています。欲望渦巻く世界で見てきた人間模様から導き出される論はガツンときます。


健康についての内容もおもしろく、「女性は男性と同じように欲深くなって同じように飲食するようになったために、毛が抜けたり足が臭うようになった」と書かれているのにはびっくり。この時代の貴族の女性たちは性的に盛んだったそうです。ほかにも「いまは悪を憎む発言をしている人だって、権力を持ったら悪いことをするようになる。悪を行使できる立場を得てないから、それをしていないだけ」ということも書いてあり、財や地位を妬まれてきた人の立場から見た群衆のありようが鋭く描かれています。
哲学を学んでいる人間は他人に疎まれるので、できるだけ一般的で目立たない清潔な身なりをしておけという教えも、現代のビジネスマン向けファッション術のよう。


粗雑なものには流されず、鈍いものに引っ張られず、大切なところを守りたい。そんな心持ちのときに支えになる言葉ばかりでした。

ローマの哲人 セネカの言葉

ローマの哲人 セネカの言葉

 
セネカ 現代人への手紙

セネカ 現代人への手紙