うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

今日の新聞に、仏教サーンキヤがあったよ

わたしは、ヨーガ・スートラというのは日本人の場合、仏教を認識してからじゃないと混乱せずに読むのはむずかしいのではないかと思っています。もともと4冊の本が歴史的に複雑な状況で組まれているという要素を抜きにしても、読みはじめたら、とくに1章が「こういう話、仏教で聞いたことあるなぁ」と、そういう感覚になります。
そのへんのことを話すのにとってもよい記事が今日の新聞にありました。



東京新聞:「落ち着き」を生きよう(本多弘之 氏 / 親鸞センター所長)


一般の新聞なので、出だしはよくありがちな「忙しいという字は心を亡くす……うんぬん」という流れなのだけど、そこからグイッといく。
自己を失うとはなにか、そもそも自己とはなにか、こころというのは意識のどこか、という滑り出しのあと
(以下抜粋)

現代の生活は、意識活動が減少しているわけではない。むしろいろいろなことに「神経」をすり減らしているのである。神経を使うことは、意識の使いすぎでこそあれ、意識活動が減っているわけではない。では何を「失う」ことが問題となるのか。
人間にとって、確かに存在していると言い得るのは「意識するはたらきと意識されている内容」のみである、という考えを、「唯識思想」という。

新聞だし、こっから「なんとなくいい話」っぽくゆるい感じでまとまっていくのかな、と思いきや、

この場合の「識」とは、「意識する」という作用のみではなく、その意識内容、すなわち意識されている対象や、そこに起こっている心理作用をも含んでいる。この心理作用を、「心所有法」、略して心所法あるいは心所という。
心が起こる時には、かならず何らかの心所が同時に起こっている。たとえば、花を見る時には、きれいだなとか欲しいなとかいう感情が付いているということである。

サーンキャ・ベースのヨーガの教え(花の例はブッディとアハンカーラの定番)。
で、このあとさらに深いところの説明に入っていきます。


私たちが、普通に「こころ」と言う時には、この「心所」のことを言っていることが多い。情緒とか情念というのが、この心所のことなのである。心それ自体は、普通には私たちは意識できない。意識していることそれ自体なのだが、それを自分でも意識して見ることはできない。しかし、意識していること自体は、どこかで知ってはいる。

プルシャの説明の仏教バージョン。わかりやすーい。
つづき、いってみよーう。

しかし、現実の私たちのこころは、意識に付帯する心所にむしろ突き動かされているのである。

ラクリティの説明の仏教バージョン、わかりやすーい。


(このあと少し省略しますが、最後のまとめの手前までの内容が素敵すぎ)

仏教では、煩悩を「客塵」というのだが、煩悩は心所法だからである。これは私たちの主体が「心」であって、心所はそこに起こる「お客さま」なのだという見方から来るのである。主客の顛倒ということがあるが、私たちは自己に起こるお客の心理作用に主人の場所を奪い取られていることが多いのである。

ここまででも「うまい!」と膝を打ちまくりのスーパー説法なんだけど、さらにこのあとプラクリティの分解までさりげなくやっちゃうの。すごい。


特に現代生活は、大地や草木などの自然環境から遠ざかり、いわゆる文明化した人工空間で生活している。ここで起こる心理作用において、私たちの本来の自然な自己自身のいのちが奪い取られているという感覚が、「自己喪失」状態といわれる忙しさの感覚の原因なのではなかろうか。

「忙しさの "感覚" の原因」というところがポイント。
つづき。

この多忙な生活から、一時的に旅行に出たり、自然の豊かな場所に散策に行ったりすると、なにか「こころ」が取り戻されるような感覚が与えられるのには、それ相応の意味があるのである。

ラジャスが過剰な人工空間で、動かなくてよいことによる状況がタマスを増やす。もうこのバランスは生き物として限界よ〜となったときに、純粋なものを求めていく。と、ヨーガ方面の用語を使うとこうなる。



浄化の話をしているわけなので、思いっきりりヨーガ・スートラな記事なのだけど、それにしても、「客塵」って、小粋ですよね。いいなぁ仏教。おしゃれだなぁちきしょう。
ヨーガなんて、

プルシャがプラクリティに出会ったら、チッタになっちったー!

というくらいのことしか思い浮かびませんもの。
もっと練習せにゃいけませんね。(なんの?)



今年はインド六派哲学を真面目に勉強しようと思っていて、仏教の本はなるべく手に取らないようにしているのだけど、つい禁断症状のように読んでしまうなぁ。まだ5日だよ……。
で、無理やり「これは真宗のお坊さんが語ってはいるがヨーガの話だ。内容はしっかりサーンキャだもん」と言い訳しながら読んだりする。ダイエット女子か!