うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

養老孟司さんの読書推進セミナー「読書で、脳を揺さぶれ!」

養老孟司さんの読書推進セミナー「読書
東京国際ブックフェアで開催されたセミナーへ行ってきました。
冒頭の「いい本、悪い本は、読んでみないとわからない。いいか悪いかはモノサシによる。物事そのものにいい悪いが "ついている" と思っている人が多いでしょ」というトークから展開する70分。
前半で電子出版への思い、自身と読書の歴史が語られました。情報環境が変わったのに本はそのままの日本の事情について、もうちょっと「知識のインフラ整備」に一生懸命になってもいいんじゃない? と。


瀬戸内寂聴さんの「古いものに固執しては文化が死んでしまいます」という視点での電子書籍推進とは別の感覚で、「とことん調べたいことがある人(昆虫のこと)」ならではの筋立てでお話が展開されました。「昆虫好きのIT利用術」もおもしろかった。


行動する前に、まず「正しい○○をしよう」と考えるスタンスへの指摘は、まるでミスター・ミヤギ。「言うことがない人が英語を勉強して、どーすんの?」というところで、会場は爆笑の渦に。
このとき、なんとなく「若さの秘訣は、正しさはさておき、広く世の中に伝えたいことがあるか、ということかもしれない」と感じました。声だけ聞いていたら40代。動きを見たら、50代。毛の量は30代。髪の色だけが実年齢っぽい。「僕のような話し方は、アメリカだとホモ扱いされる」とおどけていたけど、マッチョではない方面で生命力みなぎる雰囲気は素敵すぎました(75歳だそうです)。
思いっきり漫談なのだけど、途中でちゃんと時間を見ていて、「本は読み方で生きたり死んだりする」と、読む人が、どうなのかってことなのよ。というまとめに入っていく。「読書は、人に奥行きをつけてくれるものだ」と。



すべてのお話を聞き終えて、わたしが感じたメッセージは「本は世に出た瞬間に、過去の物語となっている。読書の意義は、時間をこえたものに寄り添う読み手の態度にある」ということ。
著作のなかで常々「都市化」について語られている養老氏。今日のお話も軸はそこにあったのだけど、日本語の特徴と言語脳と感覚の関連性については、お話できくほうがわかりやすかった。
「人数が多いと必ず苦情が来るから、いろいろ気をつけて話さなきゃいけない」と、著作内での雰囲気と同じ感じで軽くボヤいてから始まったトークライブでしたが、ところどころに本音がのぞく。エンターテイナーだ。


人材の問題ではなく、環境の傾向として、これからどんどん、こういうお話ができる人が減っていくんだろうな。「人が密集したら、刺激はうっとうしいから摩擦を避けるのは自然なこと」と、足を運んだ人のことを考えつつ、でも本音が聞きたいんだよね、ってことを理解しつつの場作り。そこのところでジゴロ過ぎない感じも素敵。今の時代へのあわせかたの運動神経がいいんだろうな。
シャレがシャレにならないと、楽しめない。楽しむのも、楽しめなくするのも、自分の脳のはたらき。自然な脳のはたらきに素直になることが、人生を楽しむ秘訣だヨ。と、全般にそんなメッセージが込められているように感じました。
読書で「笑えるチカラ」の奥行きを鍛えていこう。