うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

短く深く熟睡する法 内藤景代 著


あいかわらず安定感あるおもしろさと読ませる内容で、ほかのヨガの先生が書かない分野のことをばっちり書いてくださっています。
羊を数えるとき、シープとスリープは韻を踏んでいるから暗示になるけど、「ひつじ」って言っててもムダという話など、至極納得の内容ばかり。
この本を読みながら、日本語にはいい韻を踏むものがないけど、もう定着した韓国料理の「ナムル」はどうか。と思いました。ナムルが一皿、ナムルがふた皿、ナムルが三皿…。こっちのほうが、眠れそう。
こういう基本的すぎて見落としていることや、テレビの口調に知識の得かたまで固定化されてしまった人には、「はっ」とする気持ちで楽しく読めるはず。

多くの人は、「眠る」というと、体も脳もいっしょに眠るものだと思っています。
でも、実際はそうではありません。
体と脳は「交代で眠る」ようになっているのです。(P14)

体も脳も両方死んでいるかのようなときに、心臓を動かしているなにものかを、インド人はこれをうじゃうじゃ考えたのですが、人間はそもそも体と脳が交代で寝てて、すごいリスクヘッジをしてる。動物もそうなんだろうな。襲われるもんね。虫はどうしてるんだろ…。



姿勢についても、繰り返し語られます。

 大脳を休め、くつろがせ、楽になるには、脳の幹部・脳幹につながる首と背骨を伸ばす姿勢が重要です。(P68)


 なぜ、姿勢が大事かというと、交感神経系の中枢は、背骨(脊髄)にあり、副交感神経の中枢は首と腰(仙髄)にあるからです。(P130)

姿勢がだらける気でいると頭の闘争心が抜けなくて、余剰エネルギーを説教みたいな形でふりかざしたくなってしまう。そういう状態の人をわたしはたくさん見てきたけど、いわゆる「いい椅子」も考えもの。



脳のはたらきの説明は、いつもながらすごくわかりやすいです。

 生まれてから、ずっと眠らず、働き続けてくれている、脳の幹部・脳幹は、快感! が大好きです。できるだけ快適に生きようとします。
 ところが、現実対応をする大脳のほうは、体や心が喜ぶ、<快感>に対して、「罪悪感」をもちやすいのです。といっても、大脳は眠るので、起きているときだけですが…。しかし、その大脳が起きているあいだに考えていることが、眠りの<質>を左右しますので、あなどれません。(P162)

練習なのに、楽しいなんて…とか、楽しくてはいけないはずと考える人は、まあそら不眠にもなるわな。と思ったりします。



瞑想の説明も、これまたわかりやすい。あんまりここについて書く人、いないのよね…。

過去が失敗だらけのイメージでも、それを全部、消去しようとすると、心は空っぽになりかねません。だから、過去のイメージを完全削除するのではなく、「イメージの結びつきや、つながりを、切ってしまう」ことが大切なのです。(P174)

印象の紐づけをしているのも、あなたなんですよ。ってことなんですよね。知人との不仲でプンスカしている友人に「言われたことと印象と妄想の紐づけを切っても恨み続けることはできるんだから、ただシンプルに恨むだけにすれば?」といって驚かれたことがあるのですが、まあでもそういうことなんだよなぁ。


内藤景代さんの本を読んでいると、現役の日本人ヨガ講師のなかで格段に説明がうまいと感じます。楽しく読めます。
言い切りのトーンが強いところはちょっと上の世代の人ならではの勢いと感じますが、いま50代以下の人の感覚だと言い切りのトーンでテキストを出すのは難しいと思うので、そういう面でも貴重です。


★内藤景代さんの他の本への感想ログは「本棚」に置いてあります。