うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

命売ります 三島由紀夫 著


友人のすすめで読んだ「音楽」がとても面白かったので、こちらも読んでみました。
音楽は「婦人公論」での連載だったそうですが、こちらは「プレイボーイ」での連載。ターゲット別にこんなふうに構成したり書き分けているのがおもしろい…。しかも主人公は広告代理店勤務だった男性。比喩もその設定を踏まえての表現だったりして、雰囲気がある。
生きるとか死ぬとか努力とか生きがいとか、そんなものは ── という思索がときどき織り込まれているのだけど、横尾忠則「インドへ」に書かれていたことを思い出しました。三島氏は特別ななにか(運命の啓示のようなもの)を得たそうな感じの発言をしていたのだよなぁ、と。LSDをやっている女性が出てくるあたりにもこの時代らしさが出ているのだけど、全体の物語はまるでコントのように進んでいきます。


主人公は基本的に生きることに対してふてくされているのだけれど、「努力」に対してこんな批評をします。

『それにしても努力が見えすぎるじゃないか』
『無意味そのものが努力しているなんて浅ましいじゃないか』

浅ましいという言葉を選ぶのか、と思いました。神になりたいの? 男の子だなぁもう。


なにかを乞うている自分を見るというのはとてもダサいし、そりゃあわれだけれど…。そんな物語を「プレイボーイ」で連載するって、この頃の雑誌はおもしろかったんだろうな。
大きな会社をなかなか辞めなかったりするおじさまの武勇伝に見られる "やさぐれかたのトーン" みたいなもののソースはこういうところにあるのかな…なんて思いながら読みました。三島由紀夫自身もそのあたりのメンタリティをパロディ化して書いているような。