うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

西インド雑感


はじめて西インドへ行ってきました。ムンバイから入り、アーメダバード(アフマダーバード)、ブージ(カッチ地方)へ行きました。
インドへ行くこと自体は初めてではないのですが、毎回ほかの国へ行くときの何倍も緊張します。行けば行ったで数日後にはもう別の感覚になっていて、そうそうこの感覚を忘れたくないのだという気持ちを思い出す。この繰り返しです。
慣れてきたかなと思うことが一つあるとするならば、しつこくてうんざりすることはあっても、じれたりイライラする気持ちが起こらなかったことです。インド旅行の二回目くらいまではインド特有のしぐさも常識もわからなかったので、「やる気あるの?」「放置されてるの?」みたいな怒り(=恐れ・不安由来のもの)がよく発動したものですが、いまは放置されていても基本的に存在することを肯定されていると思えるインドの "この感じ" の居心地がまさり、日常の中で過剰な精度を求め合わないところがいいなと感じます。
今回はヨガやバカンスで外国人が訪れるような場所ではない地域へ行き、15年前に初めてインドへ行ったのときを思い出すような感覚がかなりありました。せっかくなので、このフレッシュな刺激をいくつか書き残します。



◆人口密度も道の密度も高い
都市中心部の人の数は「毎日が大みそか前の上野アメ横」くらいが基本で、多いところは「そこへ渋谷センター街と新宿歌舞伎町のみんなもやって来たよー」というくらい。すごいを越えて「なぜこれで成り立っているのか」というレベルです。道も、日本の道がざっくり編みのニットならインドはガーゼくらい細かいです。救急車とか、どうしてるんだろ…と思ったり。




◆男は男、女は女の区別がくっきり
ボディチェックはマシーンの時点で分かれていたり、学生さんたちも男子は男子軍団、女子は女子軍団。これはあらためて考えるとものすごくインド特有の事項のひとつかもしれません。北や南に比べるとカップルが歩いているのを見る機会が少なかったです。




◆価格が一律ではない。とくに交通。もちろん基本はふっかける
 <オートリキシャー>
地方のオートリキシャーはやはり人によって2倍3倍の価格で言ってくるので、距離とコストの感覚が身につくまではそれなりに学習コストがかかります。価格を聞いて一度では乗らず、次かその次というふうに値段を聞いていくのがわたしのやりかたですが、もう価格帯を知っているルートならば、最初から普通の相場を言ってくれる人もいるので、確認してなるべくさくっと乗ります。
人を疑うのは疲れることなので、自分なりにやりとりに慣れていくしかありません。もしくは、最初に自分で値段を仮決めして言ってみます。「ここまで○○ルピーで行ってもらえますか? 二人なんですけど」というように。そうすると、ここまでは○キロだから普通は○○ルピーだけどもう○○ルピーかかるよ」というふうに、会話になります。内容は嘘でも、会話が成立します。それが大切です。
いきなり言い値を信じる・信じない/言った・言わないの関係というのは、ロボットと一緒。俺ら人間同士だろ? と問われているような気持ちになります。間に会話・交渉が入ることこそが、コミュニケーションかと。自分の行動の目的を理解してもらい、その移動のこの部分をこの値段でお願いねというようなやりかたを怒らずに貫きます。
何人かに連続でふっかけられると、またか…とがっくりきますが、それがそうのうちに またかぁ〜あ、そのくらい盛ってみましたかずいぶん盛るねぇ〜ちょっと、校庭の裏で話しましょうか というふうに自分主導で脳内処理できるようになってきます。
おもしろいのは、運転手のほうが多めの金額を言ってきたのに大きな金額のお札しかなかったりすると「じゃあその小さいお札がある分だけでいいよ」となったりもすること。わたしはもともと1.5倍くらいならスルーなのでたまにそこで肩すかしにあいました。おもしろいよねぇインド。


 <電車>
長距離電車は早くチケットを買ってエアコンなし(=食事なし)を選べるとこんなに安いのか! というくらいクラスによって値段が違います。いいクラスになると7倍か8倍までいきます。上のクラスと庶民クラス、両方乗ったので後日レポートします。


 <高速バス(夜行バス)>
カプセルホテルみたいでした! 2回乗ったので後日レポートします。




◆地図が機能しないほど入り組んだ街では、リキシャーの人が頼りになる
近いはずなのに行けない場所がたくさんあります。 こんなに安くていいホテルがあるのか! というような宿へ案内してくれたのは、やはりリキシャーとタクシーの人でした。運転手が誰かに聞いてくれて、その人がまた誰かに聞いてくれて…という流れでよい情報を得られることもあります。




◆ものすごく声をかけられ人が寄ってくる。写真撮って〜 と寄ってくる
リキシャーの誘いは駅前なら5秒に1回のペースです。リキシャーの人と話しているときや、街で道をたずねるとものすごくたくさん運転手が寄ってきて全方位を固められたような感じになるのですが、これも慣れです。インドでまずパニックになるのって、これなんですよね…。
「写真撮って〜」の勢いも、とにかくすごかった…。いまは相手(インド人)がカメラを持っている時代なので、撮られ始めたら自分はくいだおれ人形なのだとセルフ・イメージを決め込み、できるだけ軽薄な笑顔で嵐が過ぎるのを待ちました。修学旅行生のいる場などへ行くと、もうとんでもないことになります。かに道楽のかにを足しても足りないくらい学生が寄ってきます。女の子はちょっと期待した目で「アーユーコリアン?」と聞いてきます。正直に「ごめんよー。ジャパニーズなんだー」と答えます。
15年前と違うのは、たまに男性がひとりで寄ってきて一緒にセルフィーに写ってよといわれることがあったこと。
15年前と変わらないのは、突然左右に寄ってきて「撮って!」と言われることもあること。



これは、同行者の母のスマホに収められていた写真。左のサングラスの人が、「俺らを撮って!」と勝手にディレクション。やりおる。なにこの不謹慎なドリカムみたいな構図。




◆ミスター・アベ、シンゾー・アベ効果は交通機関従事者の人との会話で随所に
ここ数年でちみちみと関係を紡ぎ、2017年にぐぐぐーーーっと結びつきを深めたインドと日本。2017年の4月にはアライバルビザといって、かつては出国前に必ず面倒な手続きをしなければいけなかった入国ビザの手続きが、ビジネスの場面では必須でなくなりました。到着時の申請でも入れるようになりました。日本人のみ、それが可能です。急にあさって仕事でインドへ行ってくれと言われても、エアチケットが取れれば行けるようになったということです。
今回は特に親日ムードの高まっている、2017年に安倍首相が訪問したアフマダーバード(グジャラート州)へ行きました。わたしは以前から国際ヨガDAYも含めてモディ首相の政策・キャンペーンがたいへん気になっており、トランプ大統領が確定したその日にインドで高額紙幣を廃止する発表をするとか周到すぎるだろうと、そんなことが気になっているのです。
そしてインドネシアジャカルタ・バンドン間の高速鉄道で日本が不採用になったあとにぐぐっとのめってくるモディ首相、そこに応える安倍首相。だいじょうぶなんか…。いま肌で感じるならこの地域かなと思い、行き先を西インドにしました。


── そして。行ってみてそんな話をされたかというと…
興味のある人はあるといったところ。その辺を歩いているおじさんからアフマダーバードでは「去年シンゾー・アベが来たよ」と言われたりしました。高速バス会社の人やタクシーの運転手さんはやはり関心が高いようで、この地下鉄は日本が作っているんだよ(ムンバイ)とか、あの橋をシンゾー・アベがパレードで渡ったよ(ネルー橋)とか、その様子の動画を延々見せてくれる人もいました。
もともと西インドはインドの中でもぼったくりや詐欺が少なく旅しやすいといわれていますが(ムスリムが多いからというだけでは? と思うのだけど…)、今回は特に交通面で駅の人に親切に対応してもらえたと感じる機会が何度かありました。 北朝鮮のミサイルのことまで心配してくれていたりして…。


アーメダバード(アフマダーバード)でよくみる着こなし。安倍首相もここではこのファッション(紺ベスト)でした。
モディ首相って茶ベストの印象からなんともいえない「用務員のおじさん的な親しみやすさ」があるけど、なかなかどうして。なかなかどうしてよー! 国内ではスワーミーへの訪問をマメにこなしているし、インドの政治家のすごさをリアルタイムで見せてくれる人です。モディ首相はもともとグジャラート州の首相で現・インド首相なのですが、グジャラート州はガーンディー(ガンジーさん)の出身地でもあり、わたしはこの首相がある面においてどんなバランスの取りかたをするのかにすごく興味があります。


──と、そんなこんなでの西インドでした。インドは国土が日本の8倍あるので、東西南北の方面を決めても日本二つ分くらいのなかから、さらに行き先を絞らなければいけません。
なので自分なりに毎回テーマを決めていくのですが、今回は「ガーンディーの思想と活動」「綿産業と刺繍」を主軸にしました。西インドはパキスタンに近いこともあり(パキスタンは元インドです)、複数の宗教が共存する社会もリアルに感じてきました。このようなバランスの生み出すオープンさという点では少しマレーシアと似た感じがありました。
ヨガ旅行になると必然的にヒンドゥー=インドっぽさとなりやすいのですが、混在・混沌もまたインドらしさ。西インドはまだあまり行く人がいない方面ですが、これからぽつぽつと書いていく旅行記を、いっしょに砂埃の中を歩いている気分で楽しんでいただければと思います。


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