久しぶりの沖先生本。正式タイトルは「ヨガによる健康の秘訣 足の裏から頭の先までの完全健康」。
1964年が初版の本ですが、「ヨガの楽園 秘境インド探検記」から2年がたち、かなりまとまって洗練された感があります。
まえがきで、「この書の作製にあたっては、非常に多くの方の著書から恩恵と教えを受けた。」として、編集者以外のかたで以下の方々のお名前をあげられていました。
・食事の面で、人間医学社の大浦孝秋先生・無双原理研究会の桜沢如一先生
・体操の面で、整体協会の野口晴哉先生・均整協会の亀井進先生
わたしはこの野口先生と沖先生の時代を、身体内観の黄金時代といいたい。そのくらい、知れば知るほどに感覚の研ぎ澄まされ方がすごい。同じようなことを書いてある本がいっぱいあるのだけど、実際に体験してかかれたことは、ほんの少し表現が違うだけで、読み手にとっては少し違う刺激。
というか、まあ、気持ちいいわけなんですね。バッサリ斬る感じが。
今回はヨガそのものについて〜アーサナついて書かれているところまでを紹介します。
<20ページ 人間は訓練したとおりになる より>
心身のはたらきには "癖づく(条件反射する)" という性格があり、悪い癖が身についていると無意識にその癖に支配されて、意志ではどうにもできなくなるのであるが、しかし、この条件反射の法則をコントロール力育成に使うと、意志のままに自己支配ができるようになるのだ。
それは、意識的にひとつのことをそのはたらきが条件反射するまでくり返すのであり、そのはたらきが自己化すると、意志のままにそのことを自由になしうるようになる。
ほんの少しの要素でも、とにかく続けていたら、感じることがある。それがヨガの魅力。
<25ページ 現代人にアピールするヨガ より>
ヨガは体得の学であるために、説明することができにくいものが多い。また体得させる目的でただ "やれ" という教え方である。しかし、他人に紹介しようとすれば、一応形にあらわせるものだけを示すほかなく、そのために人びとは形にあらわれたものだけをヨガだと思いやすいのである。
「ただ "やれ" 」という状況が受け入れらるかどうか。出だしでかなりの人が濾過される。
<29ページ 訓練による特殊能力者たち より>
訓練の仕方には法則がある。それは、ひとつの願いを育てようとする持続的努力であり、誤りのない段階をふんでいく積極的くふうである。この意味でからだの訓練の原則は、こころの訓練の原則と何ら変わるところがない。すなわち使わないと退化し、誤った使い方をするとこわれ、適当に使うと発達する。
「誤りのない段階をふんでいく積極的くふう」というのは、おそろしくいい表現だなぁと思った。仕事もまさにそう。
<62ページ こころの動きが姿勢を作る より>
姿勢がこころの状態を現すものなら、姿勢によってこころの状態を変えることができるのだと賢明な皆さんはすでにお気づきのことと思う。つまり、重心の移動状態の違いが、脳にたいする刺激を異にしているからなのだ。
イライラしているときは、胸を張るか、大またでゆうゆう歩くと気分が落ち着く。入浴後は気分がくつろいでいるが、それは筋肉が柔らかくなるからで、イライラしたり、腹がたっているときには筋肉が硬化している。驚いたときには、足の第五指や肩や首にも力がはいっており、この驚きの状態から解放されるには、足の第一指と腰に力を入れて、肩の力を抜き、胸を張るとよい。疲れたと思うとき、アゴをひいて腰を伸ばすと、元気がでて頭もはっきりして疲れにくい。
すぐ消極的になる人は、胸と腰の力がぬけているが、この人は、胸を張って、腰と足に力がはいるようにすればよい。すぐ好ききらいにとらわれる人は、かならず一方の肩を上げて、その方に力がはいっている。心配性の人は、前かがみの姿勢が身についている。よくケンカをする人の肩は上がって腰がねじれている。また、小心の人は、足が弱く、しかも極端に第五指の方にかけていて、腹と腰の力がぬけ、堅い首の持ち主だ。
(中略)
決断力も、動作ものろくて困っている人は、弓やアーチのそり返るポーズやなわとびなどの体操を指導したら、スピード性が身についてきた。なぜこのような体操でスピード性が身につくのかというと、決断力や行動力のスピードの遅速を決定するものが腰の力であるからだ。腰の力の伸縮の幅のせまいもの、すなわち、腰の凝っている者の動作や頭のはたらきはのろい。
陰気な人がいた。私は、この人に胸をそらせるポーズ・尻に力のはいる体操・笑いの呼吸法などを教えたら、朗らかになってきた。
からだを前にくの字にかがめていると血液が酸性化するが、後にそらすとアルカリ化してくるから、もし、どちらかを長くつづけると、血液のアンバランスで、からだもこころも異常になってくる。また、からだのどの部分が凝っているかということによって、腹がたちやすかったり(腰が凝っている)、陰気になったり(胸筋が萎縮硬化している)・イライラしたり(肩の凝り)・元気がでなかったり(足や腹の異常)する。
昨日の日記に書きましたが、いくら口先のアピールが上手でも…と思うことは多い。
<66ページ 運動不足は万病のもと より>
考えることが人間の特徴であるが、エネルギーのなくなるほどに頭を使う人も少ないので、どうしてもエネルギーが残りすぎることになる。もし癖が身についていると、この残留エネルギーをその方に使って心身をそこねるような、異常なバランスを余儀なくされるのである。
健康を保っている体力も、異常を作りだしている体力も同一の体力なのである。身についてしまった条件(いいかえれば、癖になったもの)の良否が、この相違を作りだすのだから、同一の体力を正しく使えば健康になり、誤って使えば不健康になるといってよいだろう。
この「残留エネルギー」の感覚がわかるようになると、過食しなくなる、という好循環がはじまる。
<79ページ 修正体操 より>
からだは、どんなポーズをとり動作を行うときでも、ゆるむところとしまるところのバランスをとるようにはたらく。だから、形のとり方、角度の違え方で力のはいるところとぬけるところおよび影響するところが違う。これは、からだの各部分がおたがいに関係し合っているからである。骨の場合でも同じことがいえる。
ここに参考となる主なものを数例あげてみよう。1)片足を上げて立った場合、同じ側の下腹部がゆるみ、逆側(足を上げた方)の上腹部がしまる。
2)片手を上げると、低い場合は同じ側の腰に、高く上げた場合は反対側の腰に力がはいる。
3)立ったままで後方にそると、足の第一指とヒザの内側に、前にかがむと、カカトとヒザの外側に力がはいる。
4)すわってヒザをしめようとすると、背中の筋肉が伸び、開こうとすると縮む。
5)肩を下げると首の力がぬけて、腰に力がはいる。
6)うつぶせに寝て足をもち上げると、腰と臀部がしまって胸部がゆるんでくる。
7)腰を縮めると腹筋が伸び、腹筋を縮めると腰筋が伸びる。
8)下半身に力を入れると上半身の力が、上半身に力がはいると下半身の力がぬける。
9)両手を上に伸ばすと腰の力がぬけ(重心が上になる)、横に伸ばすと力がはいる。
10)あおむけに寝て、足をもち上げ横に開くと下腹に力がはいる。右足だけを上げて、右側にもっていくほど左側の腹に力がはいる。左足だと、この逆である。両足を上げて右側にもっていくと、左胸と左肩の運動になる。
「2」と「5」が特にわかりやすいと思います。ヨガは、続けていくと身体のなかで起こる慣性の法則、作用反作用の法則が見えてくる。(参考日記「押すもの、押されるもの。アーサナ中の同行二人」)
<103ページ ガルダナ・アサン(片足立ちのポーズ) 効能 より>
足を上げている方の反対の内臓に力がはいるから、胃の刺激を求める人は右足を、肝臓の刺激を求める人は左足を上げればよい。
これは、「おおお!」と思って日々の「鷲のポーズ」で確認しています。左足がんばってます。
<109ページ 体操による心身のインスタント・コントロール法 より>
つまり、疲労したとか、頭がボーッとしたとか、肩が凝ったとかいう状態は、そうなる姿勢やその他の条件をもっていることなのだから、それを効果的に、すばやく回復する方法が必要になってくる。(中略)基本ポーズや基本呼吸法を身につければ、自分でそれぞれの症状に合わせてくふうできるものと思う。
日常でなにげなく身体が動いたとき、それをきっかけに正しい作用を意識してもう一つ吐いてみる。そいういう知恵がつくのも、ヨガの実用的なところ。
久しぶりの沖先生本ですが、やっぱりいいですね。
次回は「呼吸と食事編」です。お楽しみに。
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