うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

アースダイバー 中沢新一 著

ご近所友達のユキちゃんちの本棚から借りてきました。縄文地図を手に東京を巡るお話です。
週刊現代』に2004年1月から2005年2月にわたって連載されたものだそうで、かなりピンポイントな地域にオジさん目線のテンションで執着する粘度が、「なんかタモリ倶楽部っぽい・・・」と思っていたら、こんな記事を見つけました。

 はじめての中沢新一。アースダイバーから、芸術人類学へ。
 (ほぼ日刊イトイ新聞

週刊現代のグラビアとゴシップのどさくさにまぎれていたというのが、なんとも頼もしい。下世話なモードに疲れたところに、癒されそうで、癒されない街ネタ。しかも、裏づけを明確に書いていなくても納得させられてしまいがちな中沢新一氏。
うちこは子供の頃から「四谷怪談」の怖い映像がずっと頭にあって、四谷ってちょっとドキッとする場所なのですが、この本を読んだらもう怖くありません。落語で聞いてみたくなりました。

今回も、いくつかメモしたページをピックアップします。

<111ページ 水の記憶 赤坂〜我善坊谷 より>
東京タワーといい、赤坂といい、神宮の森といい、電波塔の立つところは、ほぼ例外なく縄文の聖地のある場所だ。放送局は記憶を情報にすりかえ、大地の霊力を広告を媒介にして資本に変換する装置なのであるから、これは当然おこりうることである。
(中略)そこが洪積台地が海にふれている岬だったから、まずたましいを他界に送るための宗教的な装置が、縄文人たちによってつくられ、しばらくするとこんどはその古い装置の上に神社や寺が建てられた。そしてふしぎなことに、現代人はそのような場所ばかりを選んで、電波塔を建てたのである。正確な理由はさだかでじゃない。しかしひとつだけはっきりしているのは、こんなところにさえ縄文的思考の痕跡が、深い影響をおよぼし続けていることである。

伝道することのエネルギーが大地から起こるというのは、とっても興味深いです。

<116ページ Mの時代 より>
(以下の「森」とは「森ビル」のこと)
この「森」の増殖には、一定の法則があるように、ぼくには思われる。巨大なビルが「生えている」その場所は、ぼくたちの縄文地図で言うと、おおむね海の侵入の跡をしめす沖積層であった地帯、のちの時代の地形では「谷地」であるような地帯に集中している。「谷地」はアースダイバーがもっとも敏感な反応をしめしてきた東京の地形である。そのために、森ビルの繁殖にはどうしたって神経質にならざるをえない、かつて湿地帯であったこの地域を埋め尽くしていくこの人口の「緑」は、東京の風景になにをもたらそうとしているのか。

かつての湿地帯ではいろいろなことが起こりますが、あまりに身近すぎる森ビルは、いつも外から見上げるたびに、不思議な感覚を抱く巨塔です。

<130ページ へら鮒と銀座の女 より>
(麻布の釣り堀で)
浮きが前のとはちがって、すこしだけぐっと水中に引かれていく感覚がした、その瞬間をつかまえて釣り糸を引き上げるのだ。するとへら鮒は、はいはい、わかりましたよ、私の素敵な裸のからだが見たかったんでしょ、いくらでもつきあってあげるわよ、とでも言いそうな様子をしながら、水中に姿をあらわす。この釣りがキャッチ・アンド・リリースをルールとしているのを、魚たちも先刻ご存じなので、網にすくい上げられても、悠揚迫らざる態度を失うことがない。私に深入りしないって約束だから、ちょっとだけつきあってあげてるの、と言っているみたい。思うに、銀座の女とは金魚とへら鮒を合わせた生命体ではあるまいか。

この感じが、とっても昭和サブカル。おじさんて、こんな楽しい妄想をいっぱいしているんでしょうね。うちこも、わりと近いところにいる気がします。(最近はもう認める方向で ^^;)

<208ページ 精霊と「おたく」 より>
戦後に誕生した新興宗教の教祖のうちの何人かが、ラジオ商を営んでいたことは、一般にはあまり知られていない事実であるが、ここには人の「たましい」と電磁波との興味深い関係が、あからさまにしめされている。元ラジオ商のその教祖たちは、きっとラジオを一心にいじっているうちに、目にはみえない空間を飛び交っている電子が、遠く離れた他人に向かって意味ありげなメッセージを伝えている様子から、しだいに霊界の実在を信ずるにいたったのではないだろうか。ラジオには、人の心の内面に深く入り込んでいく、不思議な力が宿っている。

ヨガの本を読むなかで、不思議な秘伝の伝授の形容にラジオがよく出てくるので、これはとても気になりました。

地場のエネルギーには、なんとなく興味がありつつも自分では掘り下げられない領域だったので、読んでいて面白かったです。宗教の歴史と風土が切り離されないものであるように、地場と文化も奥深い。

このあとに最初にリンクを記載した 「はじめての中沢新一。アースダイバーから、芸術人類学へ。」ほぼ日刊イトイ新聞)の、「人間を超えるもの」という対談の中に、ちょこっとヨガの話が出てきます。

アースダイバー
アースダイバー中沢 新一

講談社 2005-06-01
売り上げランキング : 6361

おすすめ平均 star
star感動します
star東京って湿地だったんだ。
star東京の現在と過去をめぐる、中沢新一の渾身の一冊

Amazonで詳しく見る
by G-Tools