どのサイトを見てもよい書評ばかりなのですが、そもそもこの本読みきる時点でその世界観に共感しているといえるのではないかというくらいの厚さの本です。
この本は道場の先輩から借りました。ずっとこの本の名前は知っていたのですが、「わたしにはまだ理解できないのではないか」という気がしていて読まずにいたのですが、ここ2年でヨガについていろいろと考えたり「ヨーガ根本教典」(第二編が「解説ヨーガ・スートラ」)を読んだりして、「そろそろ、読んでみようかな」と思って読みました。
本の内容に触れる前に、まず賛辞を贈りたいのが、この本の出版について。わたしは仕事柄、日本語の間違いをつい見つけてしまう「アナログ校正ツール」が読むときに搭載されているのですが、この本はこの厚さにも関わらず「ああ、もったいない」という間違いがありませんでした。
内容にも感銘を受けたのですが、最後に近づくにつれ、出版に関わっている人々の熱意が伝わってきました。この本は、「SRF日本委員が翻訳」とあります。英語がわかる人にはどう読み取れる内容なのか(英語がわかる人ならではの「気づき」があると思うので)わかりません。
この本はパラマハンサ・ヨガナンダ(1893-1952)というヨギのお話。50章くらいあり、幼少の頃から彼がアメリカでその教えを説くようになり、死にいたるまでの長いお話です。各章ごとが完結されたお話になっているので、読みにくい内容ではありません。ときにユーモアも感じられる内容も多くあります。
特に、幼少から大学を卒業するまでのところは微笑ましく読めるお話(お友達が試験のヤマを当ててくれて、ことごとく試験にパスしますこの人)で、その後、ヨギとしての心の修行が本格的になっていきます。そしてその頃には、すっかりその世界に引き込まれてしまう人がほとんどではないかと思います。
引用や解説にも、ためになる内容が盛りだくさんです。キリスト教、ヒンドゥー教、各国の哲学、科学発明の引用解説が多く、キリスト教の引用が多いですが、基本的には特定の宗教観にとらわれず真理を追究する姿勢で構成されています。
そして、彼の学びの人生にはルーサー・バーバンク、マハトマ・ガンジーほかさまざまな偉人との出会いがあり、読みすすめるうちに、彼の自伝を通して科学史、世界史を学ぶことになります。
冒頭に、「この書を アメリカの聖者 故ルーサー・バーバンクに献げる」とありますので、ルーサー・バーバンクとヨガナンダが接触する章について、引用して紹介します。
ちなみに、ルーサー・バーバンクという人は、「世界の発明家というと、誰でもアメリカのエジソンとバーバンクの名をあげていた。一方は電気機械の発明家、もう一方は農作物や植物の発明家である。」とほかのサイトで紹介のあるとおり、世界的に有名な「トゲなしサボテン」の作者です。
第38章 ルーサー・バーバンク(ばらの中の聖者) より
「植物の品種改良の秘訣は、科学的知識を別にすれば、それは愛です」バーバンクは、私といっしょにサンタローザにある彼の植物園の中を歩きながら、この含蓄ある言葉を語ってくれた。二人は食用サボテンの前で立ち止まった。
「私は、とげのないサボテンをつくる実験の最中、しばしばサボテンに向かって、愛の念波を注ぎながら話しかけたものです」彼はつづけた「『ここには、お前のこわがるようなものは何もないよ』私はよくこう言ってやりました『だから、とげなど生やして身を守る必要はないのだ。わたしがお前を守ってやるからね』と。すると、この有益な砂漠の植物は、しだいにとげのない状態に変化していったのです」
この本を読むまでルーサー・バーバンクという人を知りませんでした。この本にはこのような偉人との多くのエピソードが綴られており、ひとことでは語りつくせない内容ばかりなのです。この日記を書くようになってから、本を読みながら感銘を受けたページをいつもメモするようにしていたのですが、この本はもう3章目くらいでメモすることを放棄しました。すばらしい学びの章ばかりなのです。
再度ざっと見直して登場人物をメモしました。
・ヨガナンダの家族
・ヨガナンダの師とその師、高弟
・ラリヒ・マハサヤの高弟、弟子、家族として登場する人物
・そのほかヨガナンダが訪問したり、そこで聞いた話、引用に出てくる人物
に分けて記載します。
なかには、ギリシャ人からは「カラノス」と呼ばれる、アレキサンダーが師としたヨギの話もあり、非常に広範囲にわたって歴史上の人物に触れる内容です。「え?この人ってヨガの人だったの?」というような発見もあるかもしれません。
多くの呼び名がある人は、それも一緒に記載しておきました。理解できなかったところ、ざっと見直すだけでは追えなかったディテールはそのままわかった範囲・内容でメモしました。
■ヨガナンダの家族(父母のほか、ヨガナンダは男四人、女四人のうち上から四番目の次男)
ヨガナンダの本名:ムクンダ・ラール・ゴーシュ
1914年にスワミ僧団入籍で「ヨガナンダ」となり
1935年に師のスリ・ユクテスワより「パラマハンサ」の称号をもらった
父:バカバティ・チャラン・ゴーシュ
母:ギャナ・プラバ・ゴーシュ
兄:アナンタ
姉:ロマ
姉:ウマ
妹:ナリニ
末の弟:ビシュヌ
いとこ:プラバース・チャンドラ・ゴーシュ
ほか二人の兄弟の名前は見落としたか、登場せず。
■ヨガナンダの師とその師、高弟
ヨガナンダの師:スワミ・スリ・ユクテスワ・ギリ
スリ・ユクテスワの師:ラリヒ・マハサヤ(ヨガナンダの両親もその弟子)
ラリヒ・マハサヤの師:ババジ
ババジの別名:マハムニ・ババジ・マハラジ、マハー・ヨギ、トランバック・ババ、シヴァ・ババ
※「ババジ」は一般に用いられる敬称。この名で呼ばれる著名な師はほかにも大勢いるが、この本に登場する「ババジ」はこの本で語られるのが初出
スワミ・ダヤナンダ(スリ・ユクテスワに出会う前にいた僧院の師)
■ラリヒ・マハサヤの高弟、弟子、家族として登場する人物
スワミ・ケバラナンダ(=シャストリ・マハサヤ)(高弟。ヨガナンダのサンスクリット教師)
スワミ・ケシャバナンダ(高弟)
パンチャノン・バタチャリヤ(高弟)
スリ・ブペンドラ・ナート・サンニャル(高弟)
ラム・ゴパール・ムズンダー(弟子で、眠らぬ聖者)
ブリンダ・バガット(弟子で、郵便配達員)
スワミ・バスカラナンダ・サラスワティ(ベナレスの弟子)
バラナンダ・ブラマチャリ(デオガールの弟子)
スリ・アナンダ・モハン・ラヒリ(ラリヒ・マハサヤの孫)
■そのほかヨガナンダが訪問したり、そこで聞いた話、引用に出てくる人物
スワミ・プラナバナンダ(二つの肉体を持つ男)
ガンダ・ババ(香りの聖者)
タイガー・スワミ(=ソーホン・スワミ)(虎を猫と思って仲良くできる人)
パドリ・マハサヤ(=ナゲンドラ・ナート・バドリ)(空中に浮揚する聖者)
ジャガディス・チャンドラ・ボース(インドが生んだ大科学者)
ラビンドラナート・タゴール(ベンガルの詩人・詩が登場。教育者・アジア人として初のノーベル文学賞を受賞)
マスター・マハサヤ(=マヘンドラ・ナート・グプタ)(宇宙の母と愛を語らう至福の聖者)
シャンカラ(=シャンカラチャリヤ)(インドの偉大な哲学者・注釈に長い引用で登場)
サナンダナ(シャンカラの弟子)
ロメシュ・チャンドラ・ドット(聖者ではないが、ヨガナンダが大学の試験を都度パスできるようにヤマを当ててくれた友達)
パタンジャリ(ヨーガ・スートラの作者)
C・G・ユンク博士(スイスの著名な心理学者・ヨガについて言及)
クリシュナ(インド最大の預言者)
スワミ・トライランガ(ラリヒ・マハサヤとともに瞑想を行っていた人)
シャンカリ・マイ・ジュー(スワミ・トライランガの弟子。女性)
オマール・ハイヤム(ペルシャの預言者・引用で登場)
ルーサー・バーバンク(ばらの中の聖者)
テレーゼ・ノイマン(カトリックの聖痕女)
カルヤーナ(スワミ・スフィネス/ギリシャ人からは「カラノス」と呼ばれる、アレキサンダーが師としたヨギ)
サダシヴァ・ブラフマン(18世紀の聖者)
スワミ・スリ・パラマシヴァエンドラ・サラスワティ(先の「サダシヴァ・ブラフマン」の師で、「ダハラヴィヤ・プラカシカ」の著者)
スリ・ラマナ・マハリシ(ヨガナンダが訪ねていった人)
プラギャ・チャクシュ(盲目の行者)
スワミ・クリシュナナンダ(ライオンを飼っている)
カラ・パトリ(博識の放浪の行者)
ラヴィダース(中世の聖者・靴直しのラヴィダース)
マハトマ・ガンジー(説明不要なので割愛)
アナンダモイ・マー(至福に浸る聖女)⇒2015年に本が出ました
ギリバラ(断食50余年の女ヨギ)
長くなりましたが、長く書きたくなるくらい引き込まれました。
この本をいまは別のヨガ仲間が夢中で読んでいます。この本を貸してくれた先輩とも、なんだか不思議な勉強仲間になりました。
▼関連トピック
●人間の永遠の探求―パラマハンサ・ヨガナンダ講話集
●パラマハンサ・ヨガナンダとの対話 スワミ・クリヤナンダ 編
●聖なる科学―真理の科学的解説(スワミ・スリ・ユクテスワ・ギリ)
●サージェント・ペパーのジャケットに写るヨガ聖者4人の話
▼英語のKindle版だと廉価です