うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

大学教授こそこそ日記 多井学 著

最近、年配の人の語り口に興味があります。

若い頃の話をするのではなく、若くなくなる過程と葛藤を話してくれる年長者は本当にありがたい存在。

年配になった時にこうなれるのかという一般人の実例として「派遣添乗員ヘトヘト日記」に感動しました。苦労を経験しながら前向きでいるお手本を見せてもらました。

 

 

この「大学教授こそこそ日記」は、先の添乗員の方より8歳若い大学教授がペンネームで書いているもので、8年でこんなに違うかというくらい、若い時代の話に好景気・バブルの香りがします。

大手銀行へ就職したのち、その道があまりに壮絶なため8ヶ月で辞め大学教授へ転向されています。「40代で都内に家が建ちそ、50代で墓が立つ」という “24時間戦えますか” の時代の銀行員の壮絶さも伝わってきて、一冊で二つの仕事の話が読めます。

 

注釈に実数を含む根拠の補足が多く、さすが大学教授と思う内容で、人口動態とシンクロしない教育機関の構造の歪みがよくわかります。

わたしは職場の同世代の人(いま中高生がいる)と、なぜ長年少子化が続いてきたのに早い年齢から受験で悩む社会になったのだろうと話すのですが、教育機関ブランディングと営業をするんですよね。

 

 

後半から大学の「経営」の話になり、そのあたりがよく見えてきます。

そこにあった少子高齢化社会という太字の注釈に驚きました。

国公立と私立を合わせた大学数は1980年に446校だったのが、2000年には649校、さらに2022年には807校にまで増えている。

国公立大の数は大きく変わらず、私大が激増している。定員が増え、学生が減った結果、2022年度は47.5%の大学(学部)で定員割れが発生。また、日本私立学校振興・共済事業団の調査(2020年度)によると、全国の大学のうち4割が赤字経営となっている。

箱物行政と同様に、学校法人と政治家の問題が見直されなきゃおかしいんですよね。

 

この本では私立大学教授の著者が新学部設立のゴタゴタや、大学にとって大きな収入源である受験料の話、地方短大勤務時代の営業活動の話まで、内部の人の苦労話として書かれています。

団塊ジュニア世代(=わたしたち)が受験をした頃の受験料による利益ってすごかったんだろうな。

 

 

この本は個人の物語よりも社会の問題に目がいく内容でした。

答案が書けなかった生徒からの「お願い文」や親が菓子折りを持ってくるケースなどは、読んでいて一緒に胃が痛む感じで。

優劣をつけなければいけない仕事の、現代ならではの苦労話が続きます。

 

このシリーズを読むとニュースの見方が変わります。

世の中で報じられることが多岐にわたる現代は、「あのニュースって、何が問題なの?」と思う未知の業態について、異業種で働く友人・知人が多くいるほど助かります。

この本は内部のことまで「日記」という形式でうまくエッセイのように書かれているので、友人作りの代わりにもなる。

テレビやYoutubeでは得られない感覚の、貴重なシリーズと感じます。