うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

スピリチュアル・ヨーガ ― からだの中から美しくなる7つの法則 ディーパック・チョプラ/デイヴィッド・サイモン著 和泉裕子・小松美都(翻訳)

これまで名前だけは知っていたけれど著作を読んでいなかった、ディーパック・チョプラ氏のヨーガの本を読みました。
8年前にわたしがインドでヨガ漬けの毎日を送っていた頃、同じ道場仲間にアメリカから来ている人がいました。その人は授業のQ&Aでパラマハンサ・ヨガナンダの名前を妙に出したがる、ああアメリカっぽいと思う人で、ディーパック・チョプラという名前もそこで知りました。
当時のわたしは有名人の名前を出しながらスピリチュアルな話をする人に対して冷やかな視点で見る癖がありました。キャッチーな説明によって影響されることを恐れていました。ディーパック・チョプラ氏の本もそんな理由で避けてきました。
ここ数年、その種の "退けたい感情" を解放するいくつかのきっかけがあり、そんなこんなでやっと読めたディーパック・チョプラ氏の本です。


読んでみたら想像以上に洗練されていて、第一章を読んだ時点でこれは保存版だわと思う内容でした。
アディ・シャンカラの唱えた生命の相の概念を使ってパンチャ・コーシャの説明をするやりかたも見事ですし、骨子はヨーガ・スートラの教えに沿わせてある。しかも、アートマンブラフマン・プルシャの三つのサンスクリットを用いない。スピリチュアリティについて解説しながら固有名詞に逃げない。
訳文もまどろっこしくなく、以下のように綴られています。

心は、めまぐるしく変わる意識の状態を映し出しています。ですから、そのときの意識の状態に合わせてあなたの感覚的な体験も変化するのです。覚醒しているときと夢想しているときとでは、意識に入ってくる印象はまったくちがうでしょう。そのときの意識の状態、つまり、心の相のフィルターによって、現実も変わっていくことに、ヨーガは注意を喚起しているのです。
(24ページ 第一章 ヨーガとは調和である/微細な枠 ── 心の領域 より)

全般、社会性を保った文章のトーンで続いていくのがよいです。無理のない前向きさ。

 

 あなたはひとつの生きた物語なのです。自分自身や、あなたの世界のことについて自分が語っていく物語に気を配ってください。人生の次の章が綴られるときには、意識して参加するようにしましょう。ヨーガの教えは、自己の意識を広げ、魂の集合体の領域と向き合うよう促してくれます。この領域こそ、現代・未来の世代に語られる永遠の物語を通して、人類のもっとも深遠な願望が成就されるところなのです。
(28ページ 第一章 ヨーガとは調和である/原因の枠 ── 純粋なる潜在力の領域 より)

少し前に読んだ「教団X」という小説に出てきた教祖の松尾さんも説法の中でこれと似たことを語っていましたが、社会性とスピリチュアリティを両輪で回していこうと思ったら、きっとこういうメッセージの出し方になるのが現代を生きる人間の本質から外れない在りかたなのでしょう。
わたしも年々、好意的に向かうべきことに対してブレーキに足を掛けない素直さ(≒勇気)は、最高にコスパの良い最強の武器だと実感するようになっています。

 

ヨガの練習の効用もとてもシンプルに、でも続ければ続けるほどそう思うことが書かれています。

人が摂取するどんな物質にも、有用ではない成分は必ず含まれています。そのため、健全に機能している消化器系は、食物に含まれる栄養にならない成分を大腸に送りこみます。健康を維持するには、消化されずに残った食物の残り滓(かす)を定期的に排出しなければなりません。
 感情面にもこうしたステップが必要です。人と人とが強い感情を呼び覚ます関係にあるとき、消化可能な量を超えた感情エネルギーと情報をとりこんでしまう傾向にあります。情緒的に健康な生活を維持するためには、栄養となる情緒的体験だけを選択して吸収し、留めておくと毒になりかねない要素は排除するように心がけなければなりません。
(120ページ 第六章 エネルギーの流れ ── プラーナヤーマとバンダ プラーナヤーマ呼吸法 より)

ものすごく理不尽な境遇であがいているときでも、快便直後の瞬間にはまったくネガティブなことが考えられない。わたしは快便の瞬間にはサマディがあると経験則で思っているのですが、それをまじめに書いてくださっていると思いました。


この本を読みながら、わたしがいちばんいいなと思った箇所はここです。

体験には必ず、不確実性の要素が含まれていることを受け入れてください。そして混乱のなかから創造的な解決策が現れるさまを観察しましょう。人生を送りながら、好奇心と純粋な気持ちを養い、まわりのものとは無関係に自分のなかで深い安心感が育まれていくことに注目してください。
(85ページ スピリチュアル・ヨーガの7つの法則/法則六 執着しないことの法則 より)

社会不安が広がると確実性を求める気持ちに意識が向きやすくなって、自信のデフレスパイラルのようなものが起こる。その渦から自分を守る方法は、くつろぎを知ることでしか得られない。ここ数年でほんとうにそれを実感するようになったので、この説明部分がとても沁みました。

これまでわたしは、スピリチュアル=インナーチャイルドだの潜在意識だのといいながら社会性のバランスがおかしくてもよしとしちゃう合法ドラッグめいたもの、という偏見を強く持っていました。そしてこの視点がゼロになるにはもう少し時間がかかるとも思っているのですが、それはさておきこの本はとてもよい。このスピリチュアルはバランスがいい。
なんか食わず嫌いみたいなことしてたな、と反省しました。