うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

それでも日々はつづくから 燃え殻 著

この人のエッセイが好きだという感覚は、なかなか言葉にしにくいもの。内緒にしておきたくなるタイプの感情です。

小説も読んだけどやっぱり仕事のモヤモヤを書いたエッセイがよくて、微妙な喩えがおもしろい。同じような話を他で読んだなと思っても、なんか毎回よいのです。

 

一方的に話を聞かされる形でしかコミュニケーションが成り立たない人を「バーニラバニラで高収入~♪」と大音量を流しながら通っていくトラックに喩える。

なんでこのタイトルなんだろう? と思って読んでいても、確実にその謎が回収される。しかも、それが的確すぎておもしろい。

 

 

あのときに比べたらましというキツい体験をした人が繰り返し同じ話を引き合いに出すのも、燃え殻さんだとイヤじゃない。またかよと思っても今回のバージョンで聞こうと思えるのは、根本的に恨みっぽい人じゃない感じがするから。

記憶はしているけど恨んでいない。そういうことって、たくさんあるから。

 

 

この本は最後に収められていた『人間の取り扱い説明書』がすごくよくて、ジーンときました。

ちょうど数日前に、夢に出てきた高校時代の英語の先生の姿と話しっぷりの可愛らしさから思い出して学ぶことがあったばかりだったので、こういうふうに昔の先生のことを思い出して価値観の立て直しをできることってあるんだよな、と思いながら読みました。

 

 

同時代を生きている同世代の人の言葉がもたらす慰めの効果は絶大で、若い頃には言語化できなかった、思っていても口に出せなかったことを、いまの自分につながる経験として的確に語ってくれています。

「自分語り」は嫌われるものだけど、この人の場合は「経験語り」で、ストリートでジャンクでサブカルなのに品がある。絶妙です。

 

 

イラストもとても素敵です。