うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

人生のレールを外れる衝動のみつけかた 谷川嘉浩 著

進路やキャリアに悩む人向けの本を読みました。

わたしがもし10代の頃からスマホを持ち20代でこの本を読んだとして、どのくらい体感的に理解しただろうか。

 

わたしの場合は、30代後半くらいがこの本を読む適齢期だったかもしれない。

この「他人の価値観」への意識は、スマホが普及してからの時代感覚のような気がする。

まあそれも今となっては昔の話です。

 

ギーターの教えと似ていた

この本に書かれていることは、バガヴァッド・ギーターの以下(第335節)とよく似ていました。

この節です。(田中嫺玉 訳)

 

他人の義務をひきうけるより

不完全でも自分の義務を行う方がよい

他人の道を行く危険をおかすより

自分の道を行って死ぬ方がよい

 

この本『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』は、常にトレンドや世間的な「正解」が何なのかを気にする「他人志向型」の欲求の危うさについて語っています。

「それっぽい説明」に留まる限り、他人の欲望や世間的な「正解」に合わせて自分の心を切り詰めることになると書かれていました。

 

 

わたしの場合は、いったん世間的な「正解」に合わせてみようとしなければ、自分自身のことがわからないタイプでした。「他人志向型」の欲求に合わせる不自然さを理解するために一度それにトライして失敗してみるのもいいと思います。

だって寿命が長いんだもの。

 

 

読みながら想起したこと

この本を読んでいる間に、ふと映画『卍』で岸田今日子さんが船越英二さんに放つ言葉が脳内で解凍されました。

妻から夫へのセリフです。

 

 

  「あんたにはパッションがない!」(関西訛り)

 

 

あの映画で観た岸田今日子さんの “取り憑かれたような感じ” が、この本にある衝動に似ている。

岸田さんが若尾文子さん演じる美しい女性に魅せられて女性同士の関係に目覚めていくお話で、原作は谷崎潤一郎の小説です。

 

 

パッションの罠

まだ『卍』の話をしたいわたしです。(本の感想はどうした)

『卍』では「あんたにはパッションがない!」と言われた夫が、「パッションならわしにもある!」と妻に応戦する形で若尾文子さんに近づき、三人で心中を試みる展開になります(なぜそうなる)。

そして夫のほうだけ死んでしまう。

他人の道を行く危険をおかしてしまうバガヴァッド・ギーター第335節の展開です。

 

この本『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』にも、強い欲望を衝動と間違えることについて書かれていました。

『卍』の夫はまさに、妻への愛着が欲望に転じて他人の道を行ってしまったパターンに見えます。

 

 

現実的な衝動の見つけ方

この本はとても親切で、自分の一段深いところにある衝動を探るヒントが書かれています。

その中で、漫画家の香川哲さんが新しい漫画連載の準備プロセスで自分自身に投げかけている質問が紹介されていました。

いくつかある中に、こんなものがありました。

 

「日頃どんな人とどんな風に交流したいですか?」

 

これはコロナの時期をきっかけに、わたしがここ数年日常的に自分に尋ねる質問とよく似ています。

月に何回くらいどういう人と会って話すパターンがあると心の潤いと安定を保ちやすいか、観察して見直すようになりました。

「何歳の頃に、どういう人間関係を持ちたい」という将来のイメージも持っています。

このセルフ・インタビューをしておくと、そのために活動を計画できたり、新たな出会いに対してポジティブになります。

ちなみにわたしは75歳になる頃に、膝が丈夫で心の安定した同世代の仲間をたくさん持ちたいと思っています。

 

  *  *  *

 

あまり本の感想を書いた感じがしませんが、この本は文字通り「キョロ充に届け!」って感じのタイトルで、実際そういう内容でした。