うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

インドラネット 桐野夏生 著

黒いわたしと白いわたしが同時に感想を叫びたがっている。
さて、どっちに先にマイクを渡そうか。
そうですね、ここは・・・
ヨガをやっている人ってポジティブですよね! という人向けに、まずは白組代表のうちこさん、いかがですか。
この本を読んだ感想を教えてください。

 

 

「すべてのことは繋がっているんだ。と、あらためて思いました」

 

 

—— ありがとうございます。
では次に黒組代表のうちこさん、いかがでしたか。

 

 

「ざまあみろの一言ですね」

 

 

—— これはこれは、痛烈なご感想ですね。
そこは白組と黒組でくんずほぐれつしながらグレーを極めていただくとして、これらを統括しているうちこさん、ざっくばらんに、いかがでしたか?


「はい。なんかこういう人、旅先で何人も見たな。そして自分もこういう振る舞いをしたことがあると思いながら読みました。わからないなりに動かなければいけない時の心理描写がとってもリアルで」

 


—— どんなところが?


「旅先で出会う人に対して、いまは頼るしかいないから話しているけど、本来ならば俺はお前なんか相手にしないんだからな、という態度に既視感がありすぎて。

それをあからさまにやるこの主人公は、そりゃ日本の実社会では居場所が小さいだろうと思うのですが、誰かに頼らなければいけないときに乗り越える葛藤が旅先で繰り返されて、プライドを捨ててアクションを起こすたびに変わっていく。主人公は自分の汚なさにうんざりする経験を繰り返しています。

この実感は旅の最中によくあることで、そういう要素が詰まっていますよね。それで、人生は旅。みたいなポエミーな気持ちになる」

 


—— そういうことを言葉に残す人が登場しますね。


「”旅先では、新しい自分になれる、それも何度でもなれる”   というやつですね。印象的でした。

日本に帰ってしばらくすると、新しい自分になれた気がしていただけだという現実を見るのですが、この物語の登場人物たちは現実を見ない。見るほうへは人生の舵を切りません。あくまで帰ってこない前提。著者の視点が現実ベースじゃないと、こんな結末は描けないと思いました」

 


—— ほかに印象に残ったところはありますか?


「ここが印象的というのはなくて、異国で何度も主人公が “どうしたい?” と問われる、その繰り返しが印象に残りました。

そのたびに主人公の回答・思考・態度にイライラしつつ、実際はエイヤと決めることばかりじゃないか。自分だってそうだろうと思うのがしんどかったです。態度の制御の描写が印象に残りました」

 


—— この小説、しんどいですよね。


「はい。でも、めっちゃおもしろい。休憩時間の全てをつぎ込んで一気読みしちゃいました」

 


—— 印象に残った表現・フレーズはありましたか?


「ある場所で生きている人に対する、”魂を抜かれたかのごとく覇気がなくて優しい” という表現です」

 


—— それは、どうしてですか?


「話の大切なところに触れてしまう気がするので、ここはノーコメントで」

 


—— なるほど、そこが大切なところだと思ったと言うことですね?


「はい。この人の近くにいれば大丈夫と思いたい人のイメージが湧きやすくて。・・・って、アッ。やだっ。喋らされてる! あなた本音を引き出すのがうまいですね」

 


—— バレましたか。

 

「わたしがこの小説の主人公みたいな精神状態になってきました。いま、信用できない人に喋ってしまった!信じてたのに! と後悔しています」

 

 

—— 話題を切り替えましょう。カンボジアへは行かれたことがありますか?

 

「ありません。この小説を読んで、37年も同じ人物が首相を務めていることをはじめて知りました。中国資本にがっつり依存して開発が進んでいる場所はタイやベトナムで見たことがありますが、カンボジアもなんですね。

経済発展の支援で癒着していくのもまた、宗教や麻薬と一緒だなと。・・・って、また喋らされてる! もー!」

 

 

—— セルフボケ・ツッコミが板についてきましたね。
まだまだ色々引き出したいところですが、そろそろお時間のようです。

 

「そろそろお時間、だいじ! 助かったー。内容喋っちゃうとこだった」

 

 

 

それでは、またいつかお会いしましょう。


ばいなら〜(司会)
ばいなら〜(うちこ)

 

 


▼この小説、猛烈に面白いです!