売れている本には理由があるのだろうから目につくものは読んでみようと、シリーズすべてを読みました。
15カ国で翻訳されたなかで特に日本で売れたというのが、これまた気になって。
この本は文庫を手にしたら手元に置いておきたくなるイラストと飾り文字のデザインが絶妙で、マーケティング勝ちな要素を多く感じます。それも含めて、良い本。
この本を読んでいる間に、わたしは生活が変化しました。植物の飾り方が充実し、そのメンテナンスをする道具の置き方を工夫し、カーテンレールにアンティーク調の金具を引っ掛けて、ずっと寝かせていたお気に入りのインド布をカーテンに変身させ、部屋の一角に好みの色味を実現しました。
ずっと寝かせがちだったお気に入りのコートを着て新宿のオカダヤへ出かけ、そのコートを着ない理由になっていた抜けた金ボタンを購入して縫い付け、またそれを着て出かける日が続きました。
自分のこの変化を振り返ってみると、ちょっとした理由で投げやりになっていたことを再起動させる、そういう力がこの本にはあります。
具体的にはunicoで見つけたアンティーク調の「望み通りの金具の色味」とオカダヤで見つけた「ぴったりのボタン」です。
わたしはそれまで、ちょうどいい色・サイズのものを探すことを面倒くさがっていたのでした。
「フランス人は10着しか服を持たない」は、うまいタイトルのつけ方です。
吟味したからこそ、その10着を気に入って着回すという意味なのですが、本を手にとる時点では「10」が気になって読みはじめます。
そして最後まで読む頃には「吟味したからこそ」の精神がインストールされていく。なんともうまい仕掛けです。
実際、読みはじめて7割ほどのところへ至るまでのわたしには、こんなツッコミの心がずっとありました。
KonMariと YATARO の焼き直しの逆輸入じゃないか
こんまりは近藤さん、弥太郎は松浦さんです。
やることは「ときめくものだけにする片付け」と「ていねいな暮らし」の本と一緒じゃないかと、そんな気持ちで読んでいました。
だけどね。違うの。違うのこれが。
最後まで読むと違うのよーーー!!!
やることは「ときめくものだけにする」と「ていねいな暮らし」だから、同じといえば同じ。違うのは、それをしてこなかったマインドセットの解き方。ここがおもしろいのです。
この感じは『食べて、祈って、恋をして』を見くびっていたわたしの反省の再現に似たものがありました。アメリカのエッセイストやブロガーの書いたヒット作を甘くみちゃいけない。
生意気に見えないように
自分のしあわせを割り引いて見せるような振る舞いが
生活の中の選択の瞬間に侵食していない?
知識や経験を隠して知らなそうに見せておくセキュリティ対策が
生活の中の選択の瞬間に侵食していない?
フランス人は、そんなことをしなくていい暮らしをしてる。
なぜって、知性を重んじる文化があるからよ。と。
要約すると、ジェニファーさんはアメリカからフランスへ留学した経験をもとに、こういうことをおっしゃっています。
アメリカ人は日本ほど生意気に見えない対策をしなくていいものだと思っていたら、そうじゃない。
実はそうじゃなかったというのがおもしろい。
ジェニファーさんは、さじ加減が絶妙です。
相手に合わせて、あるいは気を利かせて自分を雑に扱わなくてもいい。そんなときは黙っておけばいいのよとおっしゃる。そして「スノッブになりすぎないように」とも。
ものすごく売れた本なので、古本屋で確実に手に入っちゃいます。
全シリーズ読んでみたので、他の2冊についても触れると
2冊目の『今の家でもっとシックに暮らす方法』は、子育て中の人向けです。
著者がお子さんを二人育てるようになってから書かれています。
3冊目の『「凜とした魅力」がすべてを変える』は、ネットとスマホとSNSが拡がった社会で、マインドを貶めちゃわないようにね! みたいな感じです。
具体的な商品名や映画や文学作品のレコメンドもあって、英米カルチャーに疎いとちょっと置いてきぼり感が出てきます。