めちゃくちゃ面白い本を見つけました。
江戸時代には、好奇心・財力・コネの合わせ技でこんな旅をした女性たちがいた。
その足跡を一般人の旅日記や記録、絵図から解析した結果が綴られています。
わたしは以前、伊勢神宮の駐車場から参道へ向かう地下通路で昔の絵図を見たときに、「女性もいるなぁ・・・」と思っていたのですが、その実態が分解されていました。
読んでみると、なるほどそうか! と思うことの連続で、以下のことが強く記憶に残りました。
- 女性だけでの旅はありえない。男性の軍団に混ぜてもらうか、案内人を雇う。旅ができるのは財力やコネのある人。
- 現金を持ち歩くのは重いし、危険。この時代に手形や為替(旅先への送金)の方法が整ったことで旅がしやすくなった。
- 歩いた距離は一日30km台が33%で最も多く、40km台の健脚も10%以上いて、60km台という人もいた。
- 草鞋(ワラジ)一足の耐久距離の平均は40km台。宿場町じゃなくても茶屋で購入でき、履きつぶしては新しいのを買っていた。
- 今でいうガイドブックのような「道中記」というのがあって、それを見て旅先で名物を食べたりしていた。
調査項目が現代視点で面白く、この本を読むまで草鞋(ワラジ)と草履(ゾウリ)の耐久性など比べたことがなかったので、数字で示されるといろんなことが具体的に見えてきます。
女性ならではの大変さも書かれていました。
- 関所のチェックがきびしい(関所破りをする猛者の記録も面白い)
- ボディ・チェックのお婆さんの様子の描写(絵に残されている)
- 女性料金を高くとられる
- さらに、からかわれたしりないようにチップを弾むので余計にお金がかかる
- せっかく行っても入れない女人禁制の地
高野山が女人禁制なのは知っていましたが、他にも奈良の多武峰妙楽寺、大津の三井寺など、せっかくここまで来たのに、という悔しい思いをしていた記録がありました。
こんなふうに果敢に楽しんでいたトラベル強者たちがいたのか! と驚きます。
食べたものや通った場所を細かく記録していた数名の女性旅行記が読みやすくまとめられていて、あっという間に読んでしまいました。
こんな服着てこんな荷物を持って、これだけお金を使ってこれだけ食べて、こーんなに長距離歩きまくてったよという内容。
著者の専門がスポーツ史なので、当時の女性のガッツと体力がありありと想像できる書き方になっていて面白いです。江戸時代の人が身近に感じられます。