うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

東京暮色(Tokyo Twilight / 映画)

ノリちゃん三部作を観終わってしまったので、「東京暮色」を観ました。この映画では原節子さんが孝子という名前の姉役でタカちゃんと呼ばれています。
主人公は妹の明子(アキちゃん)で、有馬稲子さんという恐ろしくキュートな女優さん! このアキちゃんのファッション(スカーフ+厚め前髪+Aラインのコート)とぷっくり唇が最高で、彼女はほとんど笑顔を見せません。


話は重いと言えば重いけれど、学生時代に野島伸司ドラマを見てきた世代であれば、そうでもない重さ。各俳優さんがご都合主義的な人情を表現するのがなんともうまい。とくにタカちゃんと母親(山田五十鈴)のやりとりが好きです。
山田五十鈴さんといえば、林芙美子の小説「下町」に男性がブロマイドのような絵葉書を部屋に貼っている女優として名前が出てくる人物。おおこの人か、と思って観ました。(「釈迦」では鬼女のような役だったので…)

 


この映画は昭和30年代で、この時代のビジネスマン&ウーマンが経済成長の始まりでイケイケな様子が印象的です。
父親は銀行の監査役で平日の昼でも誘われれば酒を飲み、仕事の合間にパチンコ屋へ行き、それをお手伝いのような女子社員に手のしぐさで「ここ(パチンコ屋)に居るから」と堂々と伝えています。お金はあるのに娘に頼ってもらえない父親の設定もうまくできていて、娘に対して言葉を尽くさずに、ただひたすら自分に恥をかかせない方向へ誘導しようとするのですが、すべてが裏目に出ます。
そしてこれは時代だねぇと思うのですが、とにかく大勢がタバコを吸っています。産婦人科の待合室にいる女性も煙草を吸っています。女性のような話し方をする人も出てくるし、とにかくいろんな生き方がごちゃ混ぜで、いまより自然に多様性が実現している。
この映画を観ると、今の時代がいかにクリーンで窮屈か! なんて思ったりして。

「ズベ公」「ラージポンポン」「太陽が黄色く見える」など、いま知っても一生使う機会のない死語や当時の表現の猥雑さも、精神的にも除菌することがよしとされる今の感覚で聞くと刺激が強い。


この映画はノリちゃん三部作の後に観ると、ちょっとお父さんえらいシャキシャキ歩いちゃってどうしたの! と、笠智衆の世代設定イリュージョンに巻き込まれます。この俳優さんは挙動や姿勢で対象年齢を演じるのがめちゃくちゃうまいのね…。
原節子が泣くときに顔を覆うスピード、杉村春子が立ち回るときのスピード、いろいろ挙動の名演技が見られます。
わたしは自粛を強いられたらセンスを磨くために爪を研ぐ時間にしようと思って、上質なインプットをじっくり味わう過ごし方を心掛けているのだけど、小津映画はおもしろくてどんどん観たくなってしまっています。

 

▼このかわいさ! 前髪の束感!!!

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