うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

下町 林芙美子 著

不幸中の幸いのような流れでやさしい人と出会ってしまったときの、あのなんともいえぬ苦しい気持ちには名前がない。
寅さん(男はつらいよ)の世界はその感じを匂わせているけれど、あの世界はなんというか、ちっともセクシーじゃない。

 

この小説は素朴なのにセクシーで、どうしてそれが両立できてしまうのかが不思議でならない。
映画化されているかもと思ったらやっぱりされていて、この物語の男役はもう絶対イメージアップ間違いなしだよなと思ったら三船敏郎。うわーーーーー。大変だこりゃ。キュン死必至だわこれ。

しかもラブストーリーだけじゃ終わらない。どうにもラストがいい。最後の一行で全日本女子が泣く。全米は泣かないけど全日本女子は泣く。この種の「勇気」をほのめかす表現で林芙美子以上のものは読んだことがないし、それはまるで全盛期の谷亮子の「最高でも金、最低でも金」のような圧倒的ななにか。

 

下町

下町