仏教や哲学は「ショーウィンドーに飾られたインド」で、この書物にあるような処世の教えは「お茶の間のインド」。
冒頭の要約の通り、読んでみたらなんとまあシニカルだこと!
原文が詩なので、日本語訳は七五調で訳されています。
現代の文章の感覚だと慣れるまで読むのが難しいと思うのですが、漠然とそのリズムを楽しみながら読んで「え、何この展開! どんな話?」と思ったらChatGPTに尋ねれば、いい感じでおさらいのように要約してくれます。
まさかインドの古典をこんな風に読める時代が来るなんて。
テクノロヂーの恩恵でインド処世術に近づきやすくなりました。
こんなふうに訊けば要約してもらえます。(以下、実際に行ったQ&Aのコピペです)
Q:『ヒトーパデーシャ』に出てくる老人と若い女性の結婚の話を要約してください
A:「不釣り合いな結婚の愚かさ」を教訓とする寓話です。以下に要約を示します。
■登場人物
年老いた男(バラモンなど):性的欲望にとらわれた老人。
若い女性:無理やり結婚させられたが、若い恋人がいる。
若い恋人(召使・情人):女性と密かに関係を持つ。
■あらすじ(要約)
ある年老いた男が、若さと美しさを求めて若い女性と結婚する。しかし、女はこの老人に愛情を持っておらず、心は若い恋人に向いていた。
女は夫が寝静まるのを待ち、夜になると恋人と密会を重ねていた。ある晩、老人が目を覚まし、不審に思って妻を問いただすと、彼女は逆に怒ってこう言う。
「老いたあなたと、若く健康な私が釣り合うはずがない。あなた自身が愚かだったのよ。」
結局、老人は自分の欲望の愚かさを悔い、恥をかくことになる。
■教訓(ニティ)
- 年齢・性格の不一致による結婚は不幸を招く。
- 欲望に目がくらんだ判断は破滅をもたらす。
- 表面上の美や若さだけを求めた結果、心の不一致・裏切りを招く。
- 真の結びつきは内面の一致や相性によって成り立つ。
この話は特に、若い弟子たちに「性欲や欲望に惑わされるな」というメッセージを込めて語られてきました。道徳と理性の大切さを説く、非常に現実的なエピソードです。
これはほんの一例。
笑える詩も
インドの物語は基本的に辛辣なので、この処世術の詩を読んでいると「どさくさに紛れて何これ?!」と思うものがたくさんあります。
こんなのもあります。
女の食い気は男の二倍。
智慧は四倍。忍耐は
六倍ありて、情欲は
八層倍ぞと伝えらる。
しかもこの詩は重要なのか、章をまたいで二回登場します w
ヨガ的な教えも
“楽” について、パタンジャリ先生と同じことおっしゃってるなぁ、と思う詩がありました。
この人の世に存するは、
ただの苦のみにて、楽は無し。
されば “楽” とは、苦しめる
人の苦悩の除去をこそ
意味する語なりと知られたり。
特に後半の3行が、ヨーガ・スートラ第1章の要約のようです。
こんな書物です
『ヒトーパデーシャ(Hitopadeśa)』は、10世紀頃のインドの寓話集で、主に動物を擬人化した教訓的な物語が詩+文章で語られています。
道徳や政治的知恵を若者に教える目的で編纂されたようで、動物の中には蟹や亀など両生類も多数登場します。(わたしは蟹が好き)
構成は4章で、以下のそれぞれのテーマで処世術が語られます。
- ミトララーバ(友を得る道) :友情を築くことの価値と方法
- スンダーラ・ブルッティ(仲違い) :友人との関係がどのように壊れるか、またその原因と対処法
- ヴィグラハ(戦争):対立や戦争に関する知恵
- サンダイ(講和):和平を築くための策略と道徳的指針
(上記の文章はAIの要約がベースです)
物語も面白くて「牛飼いの妻と売春周旋女の話」「藍に染まった山犬の話」「他人の真似をして財産を得ようとした床屋の話」など、ご近所ゴシップ感がすごいのが特徴です。
まさに、お茶の間のインド。
原文は韻を踏みまくって、凝った作りのようです。
女性から権利を奪って抑え込むのがベースなのに裏切られまくっているのが痛快です。