うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ヒトーパデーシャ 処世の教え ナーラーヤナ著/金倉圓照・北川秀則 (翻訳)

仏教や哲学は「ショーウィンドーに飾られたインド」で、この書物にあるような処世の教えは「お茶の間のインド」。

冒頭の要約の通り、読んでみたらなんとまあシニカルだこと!

 

原文が詩なので、日本語訳は七五調で訳されています。

現代の文章の感覚だと慣れるまで読むのが難しいと思うのですが、漠然とそのリズムを楽しみながら読んで「え、何この展開! どんな話?」と思ったらChatGPTに尋ねれば、いい感じでおさらいのように要約してくれます。

 

まさかインドの古典をこんな風に読める時代が来るなんて。

テクノロヂーの恩恵でインド処世術に近づきやすくなりました。

こんなふうに訊けば要約してもらえます。(以下、実際に行ったQAのコピペです)

 

Q『ヒトーパデーシャ』に出てくる老人と若い女性の結婚の話を要約してください

 

A「不釣り合いな結婚の愚かさ」を教訓とする寓話です。以下に要約を示します。

 

登場人物

年老いた男(バラモンなど):性的欲望にとらわれた老人。

若い女性:無理やり結婚させられたが、若い恋人がいる。

若い恋人(召使・情人):女性と密かに関係を持つ。

 

あらすじ(要約)

ある年老いた男が、若さと美しさを求めて若い女性と結婚する。しかし、女はこの老人に愛情を持っておらず、心は若い恋人に向いていた。

女は夫が寝静まるのを待ち、夜になると恋人と密会を重ねていた。ある晩、老人が目を覚まし、不審に思って妻を問いただすと、彼女は逆に怒ってこう言う。

「老いたあなたと、若く健康な私が釣り合うはずがない。あなた自身が愚かだったのよ。」

結局、老人は自分の欲望の愚かさを悔い、恥をかくことになる。

 

教訓(ニティ)

  • 年齢・性格の不一致による結婚は不幸を招く。
  • 欲望に目がくらんだ判断は破滅をもたらす。
  • 表面上の美や若さだけを求めた結果、心の不一致・裏切りを招く。
  • 真の結びつきは内面の一致や相性によって成り立つ。

この話は特に、若い弟子たちに「性欲や欲望に惑わされるな」というメッセージを込めて語られてきました。道徳と理性の大切さを説く、非常に現実的なエピソードです。

 

これはほんの一例。

 

 

笑える詩も

インドの物語は基本的に辛辣なので、この処世術の詩を読んでいると「どさくさに紛れて何これ?!」と思うものがたくさんあります。

こんなのもあります。

 

 女の食い気は男の二倍。

 智慧は四倍。忍耐は

 六倍ありて、情欲は

 八層倍ぞと伝えらる。

 

しかもこの詩は重要なのか、章をまたいで二回登場します w

 

 

ヨガ的な教えも

“楽” について、パタンジャリ先生と同じことおっしゃってるなぁ、と思う詩がありました。

 

 この人の世に存するは、

 ただの苦のみにて、楽は無し。

 されば “楽”  とは、苦しめる

 人の苦悩の除去をこそ

 意味する語なりと知られたり。

 

特に後半の3行が、ヨーガ・スートラ第1章の要約のようです。

 

 

こんな書物です

『ヒトーパデーシャ(Hitopadeśa)』は、10世紀頃のインドの寓話集で、主に動物を擬人化した教訓的な物語が詩+文章で語られています。

道徳や政治的知恵を若者に教える目的で編纂されたようで、動物の中には蟹や亀など両生類も多数登場します。(わたしは蟹が好き)

 

構成は4章で、以下のそれぞれのテーマで処世術が語られます。

 

  1. ミトララーバ(友を得る道) :友情を築くことの価値と方法
  2. スンダーラ・ブルッティ(仲違い) :友人との関係がどのように壊れるか、またその原因と対処法
  3. ヴィグラハ(戦争):対立や戦争に関する知恵
  4. サンダイ(講和):和平を築くための策略と道徳的指針

 

(上記の文章はAIの要約がベースです)

 

物語も面白くて「牛飼いの妻と売春周旋女の話」「藍に染まった山犬の話」「他人の真似をして財産を得ようとした床屋の話」など、ご近所ゴシップ感がすごいのが特徴です。

まさに、お茶の間のインド。

 

原文は韻を踏みまくって、凝った作りのようです。

女性から権利を奪って抑え込むのがベースなのに裏切られまくっているのが痛快です。