うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

夫が多すぎて モーム 著 / 海保眞夫(翻訳)


タイトルでなんとなく手にとって読んだ、はじめてのサマセット・モーム。なにこのタイトル! と思ったら、中身もおもしろかった…。コメディの戯曲です。
このタイトルはアメリカ公演時のタイトルで、イギリスではまじめに「故国と美女」、日本では「私の夫は二人いる」だったそう。「多すぎて」というフレーズは、すごくいまどきな感じ。
二人の夫と、妻の話。戦争で死んだと思っていた夫が生きていて、再婚したら夫が二人になっちゃったという話なのだけど、夫が二人になってからがおもしろい。これ実際に劇で見たら、どんなふうに仕草をのせていくのだろう…。本心のさぐりあいも、ゲームみたいでおもしろい。
そしてそして、なるべくネタバレしないようにあるひとつのセリフに焦点をあてて書くと、以下のセリフがいまの日本でも当てはまっちゃってる感じで、なんだかそこも複雑な笑いになる。

(第3幕に登場するある人物のセリフより)

あらためて申し上げる必要もないかと思いますが、ある一組のご夫婦が、ご自分たちだけにかかわる理由で離婚を決意されたといたします。その場合、この国の法律がなにを要求しているかということになりますな。夫が妻を離婚しようとする場合は話は簡単で、妻の姦通を法廷で立証するだけで十分です。しかし、イギリスの法律は男の一夫多妻制的性質、下世話に申せば「浮気は男の甲斐性」といった考えを認めておりましてな。妻が夫を離婚しようという場合は、夫の浮気を立証するだけでは離婚成立とはならんのですよ。つまり、それに加えて、夫の暴力行為ないしは同居拒否を証明する必要があるんですな。

離婚したい女性のほうが、すごく大変な時代。女が浮気をすれば、一発ですむのに…。
なんて展開でありつつ、いちばんモテているのは妻というか「やさしくされて、ほだされてはいけないのか」みたいなスタンスがいい。


終わりかたも、なんだかうまいなぁ。というオチ。読後にニヤニヤしながら、スッと日常に戻れる本でした。