まえにここでも文章を真似した(アイデアをパクらせていただいた)「街角のクリエイティブ」というウェブサイトの編集長のかたの本。都内で開催された広告セミナーでお話されていたことが印象に残り、本のほうも読んでみました。
前半はメソッドのような感じで進むのですが、この本は後半がよいです。
なかでも
- 「好き」「嫌い」を何となくで片づけない
- 好きな理由を説明する習慣を身につけてほしい
というところが、本当にその通りだな…、と。
このかたの広告セミナーへは、都内でヨガスタジオを運営されているYさんといっしょに参加したのですが、その帰りにこんな話をしました。
うちこ:何人もインストラクターがいる組織でヨガクラスをやっていたときは、生徒さんにほめられても、純粋にほめられていることは少なかったな…。
Yさん:ほめるって、だいたい比較だからね。
うちこ:ほかの先生への不満を言いたいかわりに、文法としてわたしがほめられている形になっているだけってことが、ほとんどだった。
Yさん:わかる!
Yさんは多くのインストラクターと絡むフィットネス業界での経験が長いので、わたしよりも多くの言葉を得ています。「だいたいが比較」なんて言いながら、ずいぶんあっさり、あっけらかんとしている(経験でここまで到達しているところがすき)。
「好き」と言われるときも、よくよくそのフレーズを解体してみると比較以外の理由にはなっていないことが多くて、比較対象がある時点で「実はそっちを批判したいだけでは」ということに気づいてしまうときは、気づいてしまう。
自分の中に深く潜ったうえで出てくる褒め言葉は、それは褒め言葉を口にしている人自体が「自分が楽しいと思える瞬間」を語っている文法になっていて、それは言われたほうもうれしい言葉。「楽しむ力が湧いてきて、そのきっかけを得たことがうれしい」という意味だから。
このような実感も含めて、「好き」の理由を説明することが言葉を磨くのにとても重要というこの本の提案は、たいへん沁みるお話でした。
このほか、
思考の過程においては、「みんな」を見るのではなく、たった1人の「誰か」を想像して思考したほうがいい
という部分にもうなずきました。
まえにここで「ちょっとふてくされた、置きっぱなしの熟成ワインのようだったわたし」という、これはあまりにも私的すぎただろうかという文章を書いたことがあるのだけど、知らないところでシェアされている。(わたしは数字だけ把握しています)
こういうことって、あるんですよね。
本のほうはあっという間に読み終わる内容です。これは、若い人向けかな。
セミナーで聞けたお話はいまのわたしの頭を整理してくれる内容で、自分のアクションに落とし込む際には「商品そのものには手を加えない前提で文章を磨き上げる」ということに自覚的になれるお話でした。
わたしは言葉を大切にする人こそ信用すべき人という思いが年々強くなっていて、それは「駄弁が少ない」ということでもあるのだけど、それは「駄弁をアウトプットの手前で存分に済ませてある」ということでもある。
この本では
アイデアの99%は使えない
ということも語られていて、ほんとうにそうだ…。と撃沈しました。
わたしは1年のうちの70%の日は練習をしているので、それ×12年=3,066回、練習をしてきた計算になります。それをもってしても、途中でアレンジを自在に挟めるくらい形式化できたクラスは3種類だけ。練習のたびにいろいろひらめいているのに、アウトプットにいたる打率でいえば0.1%。1%じゃなくて、0.1%。
アイデアの1%を形にできるだけでもすごいことなのだということは、実感としてかなり沁みます。
いつも身体ばかりリフレッシュしているわたしですが、この本はとてもよい頭のリフレッシュになりました。この本はなにか企図したことを形にして説明をする仕事をする人に、おすすめです。
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