うちこのヨガ日記

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問題解決に効く「行為のデザイン」思考法 村田智明 著


プロダクトデザインをする人が、背景から理解していくためにやってきたこと、そのなかから生まれた認識共有の手法(ワークショップの内容)がまとめられた本ですが、「考え方」の部分でうなずくことの多い内容でした。特に「バグ」の考え方の章がおもしろいです。「魅力はないがダラダラ使われること」もバグと考えられ、負環のバグになる。
わたしはなによりも、ここにうなずきました。

 提供側のシステムのルールが強要されるのが、現在のITの世界です。これがもっと人間らしい多様性の中で機能すればプライバシーの漏えいや依存症などもなくなりすばらしいと思うのです。
(125ページ 精神的圧迫のバグ より)

気持ち悪いまま使うのがあたり前のウェブサービスばかりなのは、たしかに。提供側の都合の例では、東急のためにおかしくなったとしか思えない渋谷駅にも同様のバグを感じます。どうしたいのかよくわからない下北沢駅も同時に思い浮かびました。



この本では、「はじめに」と終盤の章で同じことが語られます。

 世で求められているデザインを時間軸で辿っていくと、必ず三つのプロセスを経ます。
 それは、プランニング・可視化(ビジュアライズ)・告知(アドバタイジング)です。
(はじめに より)



どこで誰にいくらで売るプロダクトやサービスなのかという目的とコンセプトが定まってこそ、マーケットを意識した具体的なビジュアルデザインワークに入っていけます。
(222ページ ビジュアルデザインへの導入 より)

これ、あたりまえなんだけど、こういうことを語る本が必要とされるところに病理があるんだよなぁ。組織病。



第1章では記憶の構造からわかりやすい文章で綴られており、なかでも、ここにうなずきました。

 情報が外界から入ってくると、頭の中ではたくさんのタグが反応します。この情報に関連すると思ったタグが勝手に引き出されてくるわけです。このタグのリンクからソリューションが生まれてくるのが「人間の頭でモノを考える」ということです。
 もしこのタグが少ないと、外から情報が来てもあまり反応できません。タグが多く、「関連する」と思う軸が多いほど反応の数が増え、新しい思いつきと過去の記憶とが結びついてソリューションが生まれやすくなります。
(75ページ 想像のためのストック より)

経験からアウトプットまで「待てる」というのも重要なんですよね。



以下は、すばらしい指摘。

(殺虫剤を塗りこんだ蚊帳をアフリカへ寄付した活動の事例の後)


 雇用を生まない、そのときだけの無責任な寄付が経済原理を乱してしまった例です。自立を妨げていて美しい考え方とはいえません。
 ソーシャルデザインで期待されているのは、経済原理にかなう仕組みの中で持続可能な営みを実現することです。近視眼的な考え方ではなかなか難しいといえます。
(162ページ 考え方の美しさとは より)

こういうの、ヨガやロハス周辺に多い気がするんだよなぁ。



この本は同じことをいろんな言葉でちりばめてくれているのだけど、以下はひときわ光って見えました。

 大切なのは、「意味のミニマライズ」は外側から作り込むものではなく、すでに内側に存在していると考える点です。何かに埋まって見えなくなっているだけなのです。
(151ページ 二つのミニマライズ より)


モノ自体ではなく存在の成り立ちやエピソードの情報が感性を刺激して価値を生みます。
(166ページ 感性価値とは何か より)

とくに後者について述べられている箇所を読みながら「なぜ、真冬のかき氷屋に行列ができるのか?」という本を思い出しました。そういえば、真冬にかき氷を食べるって、すごい行為のデザインだわ。



「矛盾のバグ」の説明に事例がたくさんあり、普段は流して妥協している不便さに気づいたりして、ちょっと包丁を研いだような感覚になれます。この本はつくりものをチームワークでやる人に、はげしくおすすめです。


▼紙の本


Kindle

問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法
CCCメディアハウス (2015-09-17)