うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

おとなの小論文教室。 山田ズーニー 著


ほぼ日刊イトイ新聞の「おとなの小論文教室。」を書籍化したものを読みました。
まえにオンラインで読んで、その感想を3年前に書いていました。読み返してびっくり。
うなずくことが多く、イッキ読み。文章を書いて出し続けていると、なんだかわかることがある。

文章には、書き手の根っこにある想い、つまり「根本思想」が強くあらわれる。
(Lesson25……いま、ここにいないあなたへ より)

さっき3年前の自分の文章を読み直してゾッとしたのですが、根本思想ってあまり変わらない。書いて出てくるものの奥には、かなり長い年月の蓄積が含まれているものなんだなぁ。



わたしは以前、まだあまりよく知らない人から「メールでは考えていることをうまく伝えられないので電話番号を教えて欲しい」といわれ、「文章にできないことは聞いても受け取れない感情だと思う」という主旨でおことわりしたことがあります。相手からは「ハッとした。頭を冷やしていただいた」という返信が来て、この人の場合はたまたま理解してくれたけれど、わたしの思いは、この本にある以下のようなことでした。

短くいう事は、大事なものだけ残して、あと全部棄てることです。短く言えないということは、大事なことの順番が自分にもわかっていないということ。これでは、人に伝えることは難しい。
(Lesson5……要約でわかる! 私の心 より)

「大事なことを決めて欲しい」という人の話は聞く側に疲労をもたらします。なので「依存は孤独の種まき」と思います。



以下はあまり書いている人を見たことがない、とてもよい指導。

 自分が、この時代を泳ぎきるのに必要だと思う力を、自分でいくつかあげてみる。


(中略。ここで4つあげられています)


 このうちベースになるのが、「問題発見力」と、「論理的思考力」だと私は思うし、この2つの基礎をつくるには、トレーニングが必要だと思う。
 それから、「歴史認識」。それも、「流れ」や「関係」としての歴史を、つかんでいくことが大事だと思う。あまりにも日々いろいろなことが起こり、背景の違う人たちとつきあっていくいま、「いま」という点だけで、背景なしに考えていると、どうしても発想が薄っぺらで、外に対して積極的になれない。
(Lesson8……自分を育てる目利きになる より)

こんなふうに解決手段から文章化しているものを見たことがない。でもこの本が出た後に、発想が薄っぺらなのに外に対して積極的になれる「意識高い系」という新パターンが出てきちゃったなぁ。


 年のわりに関係把握が弱い人は、なんとなくその機会を逃してきてしまったのではないか、やった人と、なんとなくやらずにきてしまった人の差、ではないかと、いま、私は考えています。
(Lesson22……リンクがはれない より)

関係把握の弱さに、年は関係あるのかなぁ。いずれにしても、「関係把握をやらずにすんでいる」というのが仲のよさや信頼関係だと思うのは幻想だろうな。


思考を引き出す「ふわっとした球」を投げるセンスが絶妙。読みながらいろいろなことが思い浮かぶ。
読み直すたびに刺さるポイントが変わりそうな、おもしろい本でした。


▼文庫が出てました