うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

桜桃 太宰治 著


子育ての息苦しさをこんなふうに描くなんて、大胆。
こりゃ自伝だなと思いながら読み進めていると差し込まれる

はっきり言おう。くどくどと、あちこち持ってまわった書き方をしたが、実はこの小説、夫婦喧嘩の小説なのである。

でも思考する本人の描き方は、チャーミング。ここは一貫性がある。



私は家庭に在っては、いつも冗談を言っている。それこそ「心には悩みわずらう」事の多いゆえに、「おもてには快楽」をよそわざるを得ない、とでも言おうか。いや、家庭に在る時ばかりでなく、私は人に接する時でも、心がどんなにつらくても、からだがどんなに苦しくても、ほとんど必死で、楽しい雰囲気を創る事に努力する。そうして、客とわかれた後、私は疲労によろめき、お金の事、道徳の事、自殺の事を考える。いや、それは人に接する場合だけではない。小説を書く時も、それと同じである。私は、悲しい時に、かえって軽い楽しい物語の創造に努力する。自分では、もっとも、おいしい奉仕のつもりでいるのだが、人はそれに気づかず、太宰という作家も、このごろは軽薄である、面白さだけで読者を釣る、すこぶる安易、と私をさげすむ。
 人間が、人間に奉仕するというのは、悪い事であろうか。もったいぶって、なかなか笑わぬというのは、善い事であろうか。
 つまり、私は、糞真面目で興覚めな、気まずい事に堪え切れないのだ。

これ、すごくわかるんだよなぁ。


きっと実物は爆発的にチャーミングな人だったんだろうなぁ、と思う一方で、プライベートを切り売りしすぎな気もします。
今でいうと「アメブロか!」と突っ込みたくなるような。


▼短編なのでWebでもすぐ読めますよ


桜桃
桜桃
posted with amazlet at 14.10.29
(2012-09-27)