うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

メリイクリスマス 太宰治 著


いろいろな要素が詰まった、ちょっと小粋なストーリーです。
ベースはオッサンが若い女の子にデレデレする話なのですが、最後が刑事ドラマの感動モノと同じ後味。
ちょっとしたワードが初期のドリフターズっぽい。

たとい母から、いやな顔をされてもかまわない。こいを、しちゃったんだから。

というところの恋を「こい」と書くかんじとか、ニュアンスが細かい。ものすごく年下の女性に恋をした感じをこう表現でするなんて、ニクい。小平市の細貝さんみたいなこのかんじを、両方知っている人ならきっとわかってくださることでしょう。



おじさんが女の子の前で見栄を張る場面も、描写がいい。

「もう半丁? 一丁?」とたずねる。
「あの、あたし、一丁ってどれくらいだか、わからないの。」
 私も実は同様、距離の測量に於いては不能者なのである。しかし、恋愛に阿呆感は禁物である。私は、科学者の如く澄まして、
「百メートルはあるか。」と言った。
「さあ。」
「メートルならば、実感があるだろう。百メートルは、半丁だ。」と教えて、何だか不安で、ひそかに暗算してみたら、百メートルは約一丁であった。しかし、私は訂正しなかった。恋愛に滑稽感は禁物である。

「阿呆感」「滑稽感」というワード使いが現代的!



過去に紹介したほかの作品に比べるとギャグが少なくきれいなオチで、読後感も「なんだ、このいい話は」という名作。
ギャグを期待して読むのは邪道なのよね。でもつい期待してしまうのです。


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太宰治 メリイクリスマス - 青空文庫


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