この本はすでに「冥想ヨガ入門 解脱・悟り・三昧 沖正弘 著」「冥想ヨガ入門(真言密教と禅に関すること)」というふたつのタイトルで感想を書いていますが、呼吸法についての説明の箇所をネットワーク上のメモ帳に保存して、必要なときに参照していました。
この本はヨガの本にしては側面が複数にわたり、それぞれが実践から体系だてられたしっかりとした内容、いくつかに切り分けないとコメントがしずらい展開でした。
完全呼吸法の説明はこれまでに何度か複数の本で読んでいましたが、この本の中の記載が量的にもよい文章だったので、紹介しておきます。そのほか「そのときに応じてのさまざまの呼吸法」は、ぜひ覚えておきたいもの。調味料みたいに、適宜使いたい。
<141ページ 完全呼吸法のしかた より>
完全呼吸法とは、胸圧と腹圧のバランスのとれた自然呼吸のことです。1)直立または正座、あるいは座禅を組む。
2)吸息、まず下肺に息を吸いこみますが、このとき横隔膜を下げ気味にします。すると、腹部が前に出てきます。つぎにちょっと、ろっ骨を開いて、肺の中間部に息を吸いこむようにします。このとき胸は鳩のように突きだします。さらに肺の上部をつきだすように息を吸いこみ、最後に肩をあげて鎖骨部に息を吸い入れます。
息を吸うだけで、四段階にわけられるわけですが、実際にはこれで一つの動作で、連続的にスムーズに、なだらかに下から盛り上がるような気持で胸郭を横隔膜から鎖骨までひろげて息を吸っていくのです。3)すこし息をもらして、数秒間クムバクします。クムバクの要領は、肺にたまっている空気を下腹部に押しこむような気持で行います。肩とみぞおちの力を抜き、腰臀部と下腹部に力を入れ、息をとめます。このとき、舌は上あごにつき意識は一点に集中するようにします。これは、少し完全呼吸そのものに慣れてから、守るようにしてもかまいません。
4)つぎに息を吐きます。息を吐きだすというよりも、吐息とともに腹をひっこめるような気持で、全身でしぼりだし、押しだす気持になります。吐息のときは、足と腹筋とに力がはいります。完全呼吸法のやりはじめのときは、吐息のとき、下半身に力がはいりにくいというということもあるかもしれません。これは胸式呼吸の長年の習慣で、足腰が虚弱になっているためです。
5)八分ほど息を吐いたら、胸と足の力をゆるめ、すーっと背をのばす気持になります。こうすると自然につぎの呼吸がはいってきます。それをまた下腹部から鎖骨部へゆっくり満たしていくわけです。
文章は続きますが、ここでいったん一区切り。上記は、メモ。
そしてこの先は、とっても「イザというときの呼吸法」です。
また、ヨガには、そのときに応じてのさまざまの呼吸法があります。たとえば元気を出したいとき、神経を鎮めたいとき、感覚を鋭敏にしたいとき、頭をはっきりさせたいとき、積極性をもちたいとき、などというようにです。一つの例を示してみると、
1)怒りやすいときは、みぞおち、首の筋肉、背中の一方の筋肉が萎縮硬化していますから、足腰に力のはいるポーズをして、みぞおち、首、肩、筋肉の力を抜き、ねじりや曲げの体操をして、背中の左右の筋肉の硬さの差をなくし、肩、首の力を抜いた深呼吸をすると、くつろいだ心の状態になります。
2)不愉快な気分のときは、胸を張って下腹に力をこめ、静かに深い呼吸をくりかえします。
3)落着かないときには、とくに腰に力がはいるように胸に十分に張り、ゆっくりと長い呼吸をくりかえします。
4)驚いたときは、足の内側、つまり親指に力をこめ、アキレス腱をのばし、胸を張って静かに腹式呼吸をすると落着きます。
5)元気の出ないときには、胸を張ってあごをひき、背中をのばして、力のこもった早い呼吸をくりかえすか、しばらく吸った息を止め(クムバク)て、気合いをかけるように一気に吐き出します。
6)くつろいだ気分になりたいときは、首と肩の力を抜き、左右に胸をひろげて身体をゆすぶりながらリズムのある呼吸をくりかえします。
7)いらいらしているときは、身体をしばらくゆすぶり、わきの下をはったまま、深呼吸をします。
8)あがったときには、足、腰、下腹に力をこめて強く息を吐きだします。
9)ヒステリー気分になったときには、ひざと胸を開いてゆっくりと呼吸します。
10)何かへの欲求をコントロールできないときは、後ろにそったまま深呼吸をくりかえし、ほかのことを考えます。
11)疲れた感じで、何もする気のしないときには、あごをひいて胸を張り、脚の裏筋肉をのばして脚と腰に力をこめ、手をねじりながら深呼吸します。
12)消極的感情のときは、力を入れて胸を張り、肩を下げて背中と腰に力をこめて呼吸します。
13)決断心がつかないときは、腰と足に力を入れて、強い呼吸を一気にします。
14)不安がつづくのは、腎臓が弱いためだから、後ろにそりながら呼吸をします。
15)不快がつづくのは、副腎ホルモンの異常のせいですから、身体を後ろに強くそらして深呼吸をします。
びっくりしたら拇指球! とか、受験のときのようになにかショートカット・ワードが欲しいところ。
10番は、なんかおもしろいですね。ラクダのポーズをしながら深呼吸をして、ほかの事を考える。お買い物の途中でやったら、店員さんが困ってしまいそうです。でも、「イザというときの英会話」よりも、使う機会が多そうです。
▼おまけ わりと呼吸法に関係することを多めに書いた日記
●ここ一番に強くなるセロトニン呼吸法 ― スポーツからスピーチまで
●ヨーガ入門―自分と世界を変える方法 北沢方邦 著
●呼吸のしくみ ナツメ社