相変わらず、読んでいる時間がしあわせ、と感じる著者さんの整体本。現代の疲れの正体の切り取り方が、まろやかで正しいと感じます。
わたしは大げさなのがあまり好きではないし、とくに整体は「骨盤」「歪み」と書けばクリックレートが上がりますもんね、そりゃ。と思うたびにがっかりする。わたしは身体観のなかでも「東スポ的キーワード」と呼んでいるものがいくつかあるのだけど、この著者さんはそこに気をつけて書かれている感じがするので好きです。歪みって、とりあげて光をあてるものじゃないもの。歪みの話をしている間に、心が歪んできてしまうだわよ、きっと。
整体の本は、普通に生活しながら「おぉ。まさにそうである」というものと、ヨガの中で人を見ていて「あ! あの人のアレだ〜」と思うことがあるので感想がごちゃ混ぜになりますが、いくつか引用しつつ感想を書きます。
<17ページ パソコンによる目の疲れ より>
上向き・内向き目線そのものが、交感神経が興奮している状態そのものでもあるわけです。仕事中や、興奮して寝つきが悪いときなど、目を閉じて瞼を周辺から眼球の中心に向かってそっと押してみると、上から中心に向かう方向と内側から中心に向かう方向が硬いのがわかります。
目の周りのツボ押しはふだんもよくやるのですが、それでも「上から中心に向かう方向と内側から中心に向かう方向の痛さ、すごいー」とびっくり。眉毛の生え始めの真下とかめちゃ痛いよ。いまやってみて!
<121ページ 胸の緊張が強くなったときに より>
胸椎1番と頚椎7番の間は、リラックスしていれば、呼吸とともによく動くところです。とくに緊張する場面では、誰でも自然に顎をぐっと引く姿勢をとりますが、このとき胸椎1番と頚椎7番の間をギュッと引き締めることになります。
ここをゆるめるのに、無意識でやっている動きがあるなぁ。胸と連動しているのか。
<191ページ お腹に骨盤のコンディションが現れる より>
お腹の上のほうと下のほうの力関係はシーソーのようになっていて、片方に力が入ればもう片方の力は抜けるということです。
ダウンドッグとナバーサナのむずかしさの種明かしだなこりゃ。
<192ページ 下腹に力が入らないとき より>
緊張したり疲れたりすると、腿の外側が硬くなりやすく、反対に内側のほうは力が抜けてふにゃっとしやすいということです。内側に触れてみて力強ければ、外側に触れてみると張っていないということになります。
ちょっと聞いたー? ダウンドッグから戻ると土偶の人、聞いてるー?
<202ページ 骨盤、頭蓋骨が連動して動く より>
後頭部がへこんで(さわると平らな感じがする)しかも硬ければ、胸が緊張して呼吸が浅い。そのとき同時に、仙骨は後ろに傾きながら硬くなっています。
つまり頭蓋骨と仙骨の動きは連動しており、後頭骨・仙骨が硬くなっているということは呼吸も浅くなっているということになるわけです。
ヨガニードラをやるようになると後頭部を意識する機会が増える。リラックスした後にゆっくり頭を左右に転がすと、なんともいえないくつろぎがある。体液の関係と思っていたけど、仙骨も関係しているのかな。
このほか、「手首曲げによる脱ストレッチ」「五つの微妙運動」は保存版。あれもこれも、クラスに取り入れたいネタがてんこ盛りでした。
今年は自分の身体にもう少し向き合おうとか、そういう気分の人におすすめです。まろやかに、ええこと書いてあります。