うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ちいさくなる呼吸と連動する眉間のしわ、あがるアゴの話

ヨガの指導をしている人から、たまに「こういう挙動の癖は、どう解釈していますか」というような質問を受けるのですが、そんなにパシッとすぐわかることではないので、まず第一段階としてこういう視点があるよということを書きます。
だいたい、気になる挙動は浅い呼吸・小さな呼吸で起こります。その呼吸を1ユニット単位で分解して見ます。小さい呼吸にはざっくり2パターンあり


【A】入る情報を細かくジャッジして眉間にしわが寄りやすくなるパターン(上から抑えつけている感じ)
【B】なにもしていないのに顎の下までお風呂に使っている状態に似たパターン(下から底上げされている感じ)


ヨガのアーサナができるようになると、単純に呼吸が深くできるようになるかというとそうでもなくて、人それぞれ段階の踏みかたにも個性があります。


【A】は頭が先走っている感じです。ヨガの本やウェブサイトを読んでやる気はあるけど身体の土台が不足している場合もこちら。下半身のステップを確実に踏める力強さと柔軟性が出てくると、そこに重心を預けることができ、上半身に余裕ができて呼吸が深くなりやすいです。もともと「上実下虚」だったのが「上虚下実」になってくると、上から下へ空気を入れやすくなる。
なので、下半身のバランスの難しい状態でねじりのポーズをすると、いっきに心拍数があがって、そこでスタミナを消費しはじめます。
これはリードしているわたしもわかっているのですが、ある程度までは「形」に慣れていかないと知恵が身体に刷り込まれていかないので、リード中に、直接的ではない言いかたで示唆を織り交ぜています。( 「背中側のわきの下を閉じて」などのフレーズはこの目的で言っています)


【B】は意識が「自」よりも「他」に向いてしまって、「わたし、できてる? あってる?  大丈夫? できてますか?」というモードで、胸がそわそわしています。顎もあがりやすくなります。顎が上がっていると、喉の少し下の胸ばかりで息をしている感じで、おなかのほうまで空気が入りにくいです。いろんなアーサナをバンバン繰り出すことで、「Pay attention me!」の意識を使う余裕がなくなり(頭脳がはたらき)あきらめて呼吸が入りやすくなる人もいるので、わたしはたまに「この流れで、それやるの?!」という難易度のものを差し込みます。あとは、手の指先を丸めるタイプのアーサナでもこういう状況に少し変化を起こすことができます。


比率もさまざまで、両方持ちつつその比率が49:51のように、優勢が見きわめにくく「とにかく息を潜めている」ような状況になることもあります。ハードなクレーム対応などをしているときは、たぶんこんな呼吸です。ただこの状態はたいへんバンダが効きやすいという効用もあり、ここで胸の前面に思いっきり呼吸が入るとかなり気持ちのいいスイッチが入ります。



呼吸の傾向の根っこを紐解くときには、その人のジャッジのしかたの傾向が見えます。事例は「お買い物」でも「ダイエットをやめるときのいいわけ」でもなんでもよいのですが、いまこの文章を読んでいる人にとってリアルな事例を出すと、たとえばヨガ講師への向き合いかたとしては


 【A】この人はわかりやすくロジカルに説明してくれる先生だから、信用してもいいかも。
 【B】この人はわたしも感じたことのあるあんな気落ち、こんな気持ちを表現する人だから、信用してもいいかも。


という、方向の違いがあります。あなたにとっての、うちこ先生はどちらでしょうか。
両方という人もいるでしょう。どちらがなん%ですか? わたしにとってはどうでもよいことです。「あなた」の話をしています。


いずれにしても「信用してもいい」というわけなので、なにかしらのねじれた怒りの種がポジティブに発芽しています。
怒りと言われると驚くかもしれませんが、日本語は感情の発生プロセスを包括しない単語ばかりなので、二元論に陥りやすい語を使うしかありません。
こういう話は日本語だと限界があるので、英語を使いますが


 【A】angryの種
 【B】upsetの種


わたしは、こういう微妙な違いが身体に影響していると見ています。同じ人(ボディ)でもこのブレンドが瞬間で変わる。
はじめは【B】だったのが、何度も会って慣れたら【A】が優勢な状態に移行していくというのは、よくみられることです。さらにその先の流れとしては、「この先生はわたしによくしてくれたからよい先生、あの先生はそうでなかったから二流」みたいなプチ断罪をはじめます。なので、わたしはこの流れで批判されているヨガの先生のお名前を聞くと「いい先生かも。会ってみたいなぁ」なんて思ったりします。
もともと【A】だと、ちょっとした上達で万能感や全能感を得やすいです。これについては、4年前に書きました。この記事は今もページビューが多く、わたしとしては文章がイマイチなので書き直したいのですが、あえてそのままにしています。
ヨガが上達して性質が濃く出る時期の話


【A】【B】も、色が違うだけで、意識で肉体を支配しようとする状態です。赤と青を混ぜたら紫になるのが、赤紫なのか青紫なのかの違いのようなもの。どちらの紫でも、「自尊心をひっこめるために」ヨガをするようにすれば、おのずと呼吸も深くなる。
わたしはアーサナの練習と呼吸法の練習を、そんな視点で構成しています。