うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ヨーガ根本教典 佐保田 鶴治 著

ヨーガ根本教典
ゴールデン・ウィークの課題図書「ヨーガ根本教典」を読み終えました。トータルの文字量は決して多くはないのですが、集中力が必要でした。書籍サイトであまり詳しい紹介がないので、今後読もうと思う人の参考になるように、流れも含めて感想を書きます。

<基本情報>

  • 初版は昭和48年。
  • 第一編「ヨーガ思想入門」、第二編「解説ヨーガ・スートラ」、第三篇「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」の構成。
  • 巻末の関連書籍解説に、著者はヨーガ研究の第一人者と紹介されています。立命館大学大阪大学での教授歴任後、昭和45年にインド仏蹟巡拝、という経歴の方です。
  • このほかの著書のひとつに「般若心経の真実」があり、全編を通して仏教との対比的表現が多いので、仏教についての知識がある人にはより読みやすい内容になっています。

どこがためになるかといえば、全部!といった内容なのですが、今回も覚えておきたい内容のページをメモに残しました。長くなりますが、いくつか引用して紹介します。

<27ページ「ヨーガ思想入門」原始ヨーガ より>
カタ・ウパニシャッドのなかで、われわれはヨーガという言葉の明確な定義に出会うばかりでなく、その後のヨーガの伝統の中に伝えられてきた行法と観念の重立ったものを見出すことができます。
この書の中でヨーガを定義して「五つの知覚器官が意とともに静止し、覚もまた動かなくなったとき、人々はこれを至上の境地だという。かように諸々の心理器官をかたく執持することを人々はヨーガと見なしている」と記しております。
これによると、ヨーガという行法の本質は、心の本性であるとりとめのない動きをしっかりと抑えつけて動かないようにすることにあるというのであります。

仏教に近いですね。とても。

<59ページ「ヨーガ思想入門」ハタ・ヨーガの思想構造 より>
ハタ・ヨーガの根幹をなしているのは調気法(プラーナーヤーマ)であります。調気というのは気(プラーナ)をコントロールするということです。気というのは、人間の身体のうちにあって生命活動をつかさどるエネルギーのことであります。この気はもともとは宇宙にいきわたっているものであって、われわれは呼吸によって空気とともに体内に取り入れるのであります。従って調気法は呼吸と不離の関係にあることは申すまでもありませんが、単に呼吸法ということではありません。調気法の本質はクンバカ、すなわちイキを止めておく操作にあるのであります。
調気法と密接な関係にあるのがクンダリニー(或はクンダリー)です。クンダリニーは平素は背骨の最下端に潜在しているエネルギーですが、これを覚醒させる、つまり活性化して背骨の真中を通ずるスシュムナーという管のなかを頭の頂上まで貫き上がらせることが最大の狙いです。もちろん、スシュムナーもクンダリニーも肉眼で見えるものではありません。
クンダリニーがスシュムナーを貫きますと、プラーナがこの同じ管のなかを自由に流れるようになって、この管の六カ所にあるチャクラ(センター)が活性化することになり、それぞれのチャクラに眠っていた才能が発現するようになります。そうして遂にはプラーナが頭の頂近くにあるブラハマ・ランドラという神聖な室のなかへ流れ込んでしまった時に、三昧の状態が現れて、ハタ・ヨーガの理想は実現するという次第であります。

ヨーガに関する主要用語「プラーナーヤーマ」と「チャクラ」が同時に説明されている文章。


「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」には、調気法(プラーナーヤーマ)から体位(アーサナ)、食事、性、さまざまな項目があります。どんな内容なのか、いくつか紹介します。

<192ページ 一・六二〜六三 より>
【ヨーガ行者に適する食物】
行者(ヨーギー)にとって好適な食物は次の如くである。
小麦、米、大麦、早稲米、優秀な穀物、生乳、バター、氷砂糖、新鮮なバター、白砂糖、蜜、ほししょうが、きうりなどの五種の野菜、豆類、清水等である。
またヨーギーは栄養になる食物、甘味のあるもの、バター入りの食物、牛乳入りのもの、体力をつけるもの、その他自分の好む好適なものを食するがよい。

最後の一文はなんでもありみたいなことになっていますが、「牛」を聖なる物とするインドならでは。

<211ページ 二・五三 より>
気道、体液、腹部、すべての体質等に存在する疾患を消し去る。このウジャーイーとよばれるクンバカは歩きながらでも、立ちながらでも行うことができる。

いくつもつらなる項目のうちのひとつで、ウジャーイー(最近の口語では「ウジャーイ」「ウジャイ」と耳にすることが多い)についての説明です。これについては、著者の補足解説に「この調気法は心臓に重い負担がかかるから、心臓に異常のある人はやらないほうが好い」と記載されています。

<217ページ 二・七一 より>
【調気とクンバカの種類】
調気には、レーチャカ(呼息)、プーラカ(吸息)、クンバカ(止息)の三種があるといわれ、そのなかのクンバカにはサヒタ(共同)とケーヴァラ(単独)の二種があるとされる。

吸う息よりも吐く息から語られています。

<245ページ 三・九八 より>
【ヨギーニー】
男子が適正な行法を巧みに行ってビンドゥを回収した時、婦人がヴァジローリーをもってラジャスを保全するならば、彼女はヨギーニー(女行者)である。
<<用語解釈から引用>>
 ・ビンドゥ=精液を意味することもあるが、ここでは「空点」。婦人が性的歓喜にひたる忘我の心境と、両性の分泌液の合流とをあわせ諷示している。
 ・ヴァジローリー=ひとつの項目としてまとまった解説から端的にいうと、「性交の行法」
 ・ラジャス=月経のことであるが、ここでは交接時の女性の分泌物。

今ではカジュアルに「アーサナを行う女性=ヨギーニ」なんですけれども、「ヨギーニー」になるのは大変です。このように、性にまつわる行法については驚くことが多くありました。「カーマ・スートラ」も読んでみなくては。

<278ページ 四・九〇 より>
花の蜜を吸っている蜂が、花の匂いを意に介さないように、内部の妙音に引きつけられたこころはその他の対象を求めない。

なんだか、詩的です。まるで恋の詩のようです。


これはほんの一部。同じ著者の「続ヨーガ根本教典」ほか、今後も続けて読みたいヨーガとインドの本がまた増えてしまいました。

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