うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

スタンフォードのストレスを力に変える教科書 ケリー・マクゴニガル著/神崎朗子(翻訳)

わたしは「ストレス」という言葉をどういう時に使っていいかわからず、それは「忙しい」という言葉も同じで、それぞれ自分のなかで、ストレス=プレッシャーを感じている、忙しい=期限の決まった案件を強く意識している、というふうに置き換えてなんとか理解しています。
それとは別に、慣れないことや環境が変わるとかチャレンジするなどの時に、最初は一律で緊張する。これをストレスにカウントするのはどうも変だし、旅となればむしろそれを楽しむもの。


プレッシャー未満のものもストレスと捉えると、自分の気分を占めるストレスの構成比が大きくなりすぎる。「摩擦やギャップを感じている」という途中の状態でストレスにカウントすると前進できない。義務や責任までストレスにカウントすると子供っぽくなる。大人になっても、それは年齢を社会の中で定義づけているだけだったりもして、自分のなかの子供の部分がうまく超えられないと葛藤が起こる。

「不安」は、「悪い想像のほうに多く賭けようとしている」という状態で、決定を待つ時間がしんどいという種類の疲労も、他人と関わっていく上では必要な忍耐だったりする。インド旅行ではこの種の忍耐力を毎日のように試されるから、たぶんこれをストレスとして重くカウントする人には、二度と行きたくない国になる。

受験や就職転職の結果待ち、検査や手術の結果待ち、あるいはなにかの修理待ち復旧待ち。数年に一回くらいのものもカウントすれば、かなりある。インフラの面で見たら、日本はかなりストレスの少ない国だと思います。

なんでこんなふうにいちいち考えてしまうかというと、「ストレス」や「忙しい」は、

 

 

  好きなら気にならない。多少無理してでもやる。

 

 

というものだから。
情で内面的にあっさり覆りやすいものについてストレスと思ってしまうと、好きな案件が降ってきたときに自分が調子のいいヤツに感じてしまって、それはそれでストレスだったりします。(あ! いま自然に使えた)

心の中でいったん保留にして考えて、好悪感情との境界に自分が自分で騙されないようにしたい。

 

 

前置きが長いですが。
この本は「ストレス」そのものを知りたくて読みました。
読んでみたら、この本でいう「ストレス」には「ダメージを受けた」「人生でうまくいかないことがあった」も含まれており、日本人がカタカナの印象で受け取る単語のイメージ以上にマッチョな内容でした。「イライラやモヤモヤを力に変える」ではなく「絶望を力に変える」くらいの強度のものも対象。


読んでみると、経験や実感として賛同するところもありつつ、話半分で聞き流すところ、苦労や傷つきや共感・連帯意識のギャップなどベースの違いを再認識するものがありました。
この本は書店で手にしてパラパラと読んだときにすごく欲しくなって買ったのですが、仕事の合間に読み進めて半年以上かかりました。この本の終盤まで読んで、この一年はやはりニュースから受けるストレスがあったのかな、なんて気づいたりして。


わたしはもともと動物実験の結果から人間の心の傾向や習性を語れることに対して懐疑的なところがあって、この本はエビデンスベースで語っているようでありながら情報源リストが巻末にあるわけでもなく、結論ありきでまとめた印象を受けました。
特に幼児期のストレスが情緒不安定に影響するかを子ザルを対象に実験した結果のくだりは、成長して出てきた猿が本来持つモンキー・マインドと無執着が重なっただけのことでは? と思ってしまって、なかなかノれない。
頻繁に「これがイコール○○というわけではない」というエクスキューズを挟みながら進むので、そこで毎回中断される。理論のところはこんなふうに、どうもしっくりこない。

 

いっぽうで、対処法の面では経験や実感から賛同するところがたくさんありました。
特に以下は、わたしも同じように対処しています。

 体がストレスに反応しているのを感じたら「いま自分にもっとも必要なのは、ストレス反応のどの効果だろう?」と考えてみましょう。闘うべきか、逃げるべきか。状況にしっかりと向き合うべきか、周りの人とのつながりを強めるべきか。それとも意義を見出すべきなのか、成長すべきなのか。
 もしストレス反応が起こって、流されてしまいそうになっても、「自分はどのように反応したいか」に意識を集中させると、それにしたがって、あなたの体の状態も切り替わります。
(第2章 高度1万メートルのストレス より)

このほか、自分の価値観を紙に書き出すというのも、有益なので毎年繰り越したい価値観を手帳に転記し続けています。

 

この本は、ストレスをなくそうという考えがそもそも無理というところから始まっているので、対処法として紹介されているワークが具体的で良いです。

ああそうか、だから「教科書」というタイトルにしたのかと最後に気がつきました。