うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

プロカウンセラーの聞く技術 東山紘久 著

読んでいるうちに自分の弱さがよくわかる、それを認めることができる、心を開いてくれる本でした。
プロのカウンセラーの技術が書かれているのに、個室でカウンセリングを受けたかのような読後感。


自分の弱い面にひとりで向き合って人格を整えるのは、とても難しいことです。

だから、誰かの「そうだよね」の言葉があると助かる。一緒にこの感情の炎と熱を認めてほしい。誰かに話を聞いてもらいたくなるときって、そういうときじゃないですか?

 

この本を読んでいたら、ずっと抱えている自分の弱みにはじめてひとりで向き合うことができました。

わたしは自分が尊敬している人や仲間に対する噂話や悪口を聞くのが苦手で、その話の流れになると心にシールドを張り、話題をその方向へ持っていく人をその後も避けたいと思う心の癖があります。
でも実際には、悪口を言う人のことを避けたいわけじゃない。その人のよい面を認識するたびに葛藤が起こり、わたしの苦手意識は二重三重の苦しみを生み出します。

 

それだけであればまだ自分の問題なのですが、実際の問題はその範囲では終わりません。話し手はわたしに親近感を持って話しています。なのにわたしがシールドを張るので、相手に罪悪感を与えてしまうのです。
このパターンをこれまでに何度も経験し、断罪者になる自分の態度に手をこまねいてきました。ずっと、自分自身の好悪感情の問題と思ってきました。
でも、それだけじゃなかった。

 


  聞けない

 

 

これが問題なのです。
聞くだけ聞いておけばよかったのです。
この本に、こうありました。

最近は、聞いた悪口を自分のなかに取りこんでしまって、自分が悪口を言われたように感じたり、悪口を言った(ぐちをこぼした)人と同調してしまい、あとから罪の意識にさいなまれたりしがちです。悪口を言うからこそ、われわれは悪くならないですんでいるのです。
(7.昔の主婦は聞き上手 より)

この内容は前後の章と関連しているのですが、前の6章は「避雷針になる」、次の8章は「自分のことは話さない」で、その話題と自我の距離の置きかたがとてもわかりやすく説明されています。
この3つの章を読んで、わたしは罪悪感の先取りをして聞けなくなっていることがよくわかりました。


罪悪感の先取りをするのは、あとで「わたしはあの人の悪口を聞いたけれども同調はしていない」と、漠然と弁解したくなる心のややこしさを学習しているから。
だったらはじめから聞かなくていい展開に持ち込みたいと、そう考える。でも違うんですよね。あとで自分のなかで調整なんてしなくていいんです。
悪口も噂話も、ただ聞いておけばよい。

はじめから聞かなくていい展開に持ち込むことを効率的と捉える、自分の「病み」に気づいていませんでした。

 

 

この本に書いてあることを、2年前のわたしは呑み込めなかったと思います。この教えを受け入れるにも、土台が必要でした。
それには明確なきっかけがありました。小津映画です。
小津作品の中で展開される会話は、まさにこの本にある「昔の主婦は聞き上手」の実写版。主婦の役が多い三宅邦子さんの演じる役を思い出すと本当にその通りで、カウンセラーの聞き方の本なのに、映画のトークスクリプトの解説を読んでいるようでした。

 

この本は書店で立ち読みをはじめたら読むのがやめられなくなり、買って帰った本です。あとでカバーを剥がして気がついたのですが、この本はずっと前からいつか読もうと思っていた本でした。買ってよかった。

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こんなふうに、店頭では刊行20周年バージョンのカバーがかかっていました。
前に「プロカウンセラーの共感の技術」という本を読んだ時に、著者の先生が書かれた本としていつか読もうと思っていた本なのですが、このカバーでなければ今回もスルーしていたと思います。

書店のカバーに「たいせつなひとの話、聞けていますか?」とあり、中を開きました。

 

わたしはコロナ禍になってから、親しい人から「話したいのだけど」と言ってもらえることがあって、それをうれしく感じています。オンラインも含めると、毎月誰かとじっくり話をしています。
そしてわたしも、そういう時に自分の話を聞いてもらい、助けられています。

これからも、自分が頑固になって心を開けないことが多々あると思います。
だからこそ、「聞けない」という心の奥底で起こる拒絶反応に向き合っておくことが大切だと、この本を読んでつくづく感じました。


この本には、「聞けない」(=シャットアウトしたくなる)心理のパターンが全方位的に網羅されています。
他人との対話を抜きにしても、普段ひとりで回しているぐるぐる思考・セルフ問答のなかにある「自分の思考として聞きたくないこと」への反応まで、やさしく紐解いてくれます。