うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

斜陽 太宰治 著

映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」があまりにもおもしろくて、この映画の女たちの関係をつなぐ作品「斜陽」を読みました。
先に映画を観てから読んだので、あのセリフはこの本からとっていたのか、ということがわかって、ちょっと元ネタ探しのようなおもしろさがありました。

そしてこの小説は想像以上に漫画っぽい雰囲気で、不気味なお嬢様世界に引き込まれました。映画のほうは蜷川実花監督の映像だからレトロでおしゃれで妖艶なのかと思っていたのですが、この物語はもともとちょっと昔のホラーのような雰囲気があります。
昭和50年代は、こういう不気味なお嬢様漫画がたくさんありました。わたしは子どもの頃うっかり洋館ホラーコミックに手を出してしまい、いまだにタイトルを忘れられない「花のようなリリベット」という漫画があって、ずっとトラウマでした。

それがなんと約40年のときを経て、あのトラウマ的ヴィジュアル世界が読書を楽しくしてくれました。おぞましい経験もいつかこうして日の目を見るのだから、人生というのは途方もなく長い。

 

さて。それはさておき、ここからが本題です。

この小説の中では、以下の文字列が二回出てきます。

 


  戦闘、開始

 


この小説の主人公「かず子」の脳内セリフ。実際には太田静子という女性の日記がもとになっている小説らしいので、彼女の言葉なのかな。
この「戦闘、開始」というフレーズは、映画の中では静子に影響を受けながら別の方法で勝とうとした富栄という女性の脳内セリフとして登場していました。

「覚悟しなくてはならない。わたしは、先生を敬愛する。戦闘、開始。」

という心の中での宣言。

 


この「戦闘、開始」は「恋を始めます」という、当時の女性の心の宣言。婚姻関係は生きていくための契約であって、それは恋愛感情と必ず紐づくものではない時代の、女性にとっての恋の始まり。恋を始めるのは別の勇気がいること。まさに革命。

 

 

この本を読み始めのわたしは、とても真面目でした。
わたしはこの小説を「」や「皮膚と心」や「グッド・バイ」のようなギャグ小説とは別モノと思って読んでいたのです。が、そんなことなかった…。主人公の弟の日記に、こんな記述がありました。

 人間は、嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。この頃の、指導者たちの、あの、まじめさ。ぷ!

ぷ! すぐ真似したくなる。

小さな子がうんこうんこと言いたくなるように、何度も言いたくなる。

 


この小説は恋の名言の宝石箱。ロマンチックが止まらない大洪水。そしてみんな、地盤がない。「斜陽」だから。もしかしたら人々の心の地盤が危うくなったその先には、恋の花が咲き乱れるおっぺけぺーな時代がやってくるのかもしれない。
わたしもいつでも戦闘開始できるよう、最高のタイミングで名セリフを出せるように爪を研いでおくことにしよう。

ぷ!

 

斜陽

斜陽