先日紹介した「夢を売る男」のネット上のレビューに「作家刑事毒島を思い出した」と書いている人がいて、この小説も気になって読みました。
殺人事件が起こるから、ミステリー。すべてが出版がらみ。登場人物は作家や編集者のほか、募集作品の下読みをする外注の人、元受賞作家、小説をドラマ化する人、小説家志望の人、熱狂的なファンなど、「小説」を生産し消費する人たち。その濃さがドロッドロになったところで事件が起こります。
小説家が書く出版ミステリーなので、実際いる人物の心理を分解して再構築した感じなのだろうけど、出版関係者の様子や自分が書いたものを絶対視していく心理は「夢を売る男」に描かれているものと似ていて、熱狂的なファンの心理は太宰治の「恥」に登場する女性を思い出しました。
自分が書いたものや行動を否定される人の反応がいちいちすごいのだけど、これは実際誰もここまでは言えないことを実際言ったらこうなるのでは… という想像かな。反応する人の心理は「伊藤くん A to E」の伊藤くんとも似ています。
他人から「どうですか」と自分の書いたものを出されるのは、しんどい仕事だろうな…と想像はしていたけれど、これはもうしんどいどころじゃない。なんでここで長文を書くかね」というところで書いてしまう人を見るときと似たしんどさ。他人のブログのコメント欄やFacebookで異様に長い文章を書く人を見るときの、あのしんどさ。
わかってくれるであろう相手を限定したところで、大声で歌いたい
こういう欲求を持つ人の扱いは、ジャイアン並に対応が難しい。
こういうキツさを、なんでエンターテインメントにできるかなぁ。プロの作家って、すごいわぁ。
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