うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

けむたい後輩 柚木麻子 著


羽柴秀吉の羽柴に、真実と書いてまみ」という自己紹介を聞いて「暑苦しい名前」と感じる先輩や、「ミューズ」という表現に「石鹸か!」と突っ込む幼なじみ女子の「こころのつぶやきの小ネタ」がすごくいい。この二人が痛くてかわいい。
ベースはこの作家さん特有の、気持ちよく反省させ励ましてくれるムードなのだけど、ラストの勧善懲悪テイストはかなり味が濃い。この作家さん、誰に復讐しているの? と思うほど。読みようによっては、最後に蹴落としていく人物が蹴落とされた人物の人生をなぞっていくことになりそうな、夏目漱石の「こころ」に似た構造にも見える。
カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」を思い出させるサブカル女性斬り。途中から1992年の映画「ルームメイト」のような怖さが押し寄せる。エンタメとしてはわりと辛口。読み方によってはホラー。


終盤を読んでいて思ったのだけど「葛藤のレベル」って、年齢は関係ないんだよなぁ。70歳を過ぎた女性の雑談を聞けば「そんな嫉妬をしたり、競う話をしてるの?!」と思うし、20代なのに「スワミか!」と思うほどの人もいる。
この本は「スカッと系」なのかな。わたしは断罪モノに気持ち悪さを感じるので「スカッとしたら負け」みたいな気持ちで読んだ。「こういうことをしていると、なにかいいことあるかも」という思考で日々を送っている人や、マイノリティ・サイドに逃げている人には「グサッと系」でもあります。
「寄りかかられたり、寄りかかったり」の人間関係で疲れている人は、読むとその理由が分解されるでしょう。


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