この作家の小説はどれも少し「人の死なない江戸川乱歩」みたいな感じがするのだけど、この物語はミステリーだった。
犯人が詰められていく会話が、ふしぎと嫌じゃない。好きなもの・コトのために無理な論理の展開を重ねていくという思考は誰にでもあるもの、という前提を絶対に覆さないような話法。
好き嫌いと理性と判断
ヨーガの理論のほうを学んでいくとものすごくロジカルな説明に出会えることがあって、谷崎潤一郎の小説を読んでいると、ふとその理論にたどり着く。
誰かが、なにかに魅せられたときの思考。魅せられたのか、魅入ったのか。
どっちでもよいですか? よくないですよね? あ。よくないって言いましたね? よくないんですね?
そんな思考に陥る小説。ただのミステリーってわけでもない。
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