うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

いつも旅のなか 角田光代 著


ベトナム旅行中に読みました。
ああああ、ある…。わかる…。そうなんだよ…。
ということばかりの旅エッセイ。
去年映画を観てから本を読んだ「紙の月」で大ファンになってしまって、旅のあいだに旅エッセイを読むぞ、と決めていました。
で、読んだら、おもしろい…。「ありがちなこと」もこの作家さんが切り取ると、がぜん沁みる。
一話目の「モロッコのバヒールくん」の話で、いきなり胸の奥のどろりとしたものをスプーンですくって「旅先で感じる日本人性の息苦しさって、これのことじゃない?」と示された感じがする。こわい。
そして、どににもこうにもおもしろい。ここは、もう膝を打ちすぎて膝がかゆい。


ハワイのダウンタウンで食べた日本食について

冷やし中華とポトフを合体させ、さらにそのつくりかたを伝達ゲームで伝え、三十人目から耳打ちされた三十一人目が調理した結果、こうなりましたという感じ。

この微妙さの描写の正確さったら!



旅慣れなさについての以下の描写も、わかる! となる。

カツアゲの恐怖と闘いながら繁華街をさまよう中学生のように。

わたしもそうだ。宿を予約せずに旅に出るのは、この「カツアゲの恐怖」がないと、旅をした気になれないからだ。



そしてこの本は、以下のくだりの前後を読むためだけで、価値がある。

友達づきあいでも恋愛のはじまりでも、仕事のやりかたでもいいんだけれど、「なんだか以前の方法論が通用しないぞ」と気づくときがある。

旅をすることで、「ああ、まだ自分は必要なときが来たら、自分を変えられる」ということを確認できることがある。



わたしが旅先で出会った友人は、日常に溺れることや、定常的な環境で他人をコントロールしようとする自我が育つことに対して批判的な人が多い。ルイトモってやつだと思う。
このエッセイは「紙の月」の世界との共通点も感じられて、ますます読みたくなる。久しぶりに、「読書」に対してわくわくした気持ちになっています。


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