もっとゆっくり読もうと思っているのに、いつもすぐ読んでしまう。【常識にとらわれない100の講義】も【「思考」を育てる100の講義】も【つぶやきのクリーム】も【つぼやきのテリーヌ】よく読み返しているので、これもきっとまた何度も読み返す。
この本の内側表紙にあることばが、この著者さんのエッセイに共通することであり、わたしがつい買ってすぐ読んでしまう理由でもあります。
孤独を恐れる世の中で、
自分だけの
「喜び」や「悲しみ」を
忘れてしまった人へ ──。
このシリーズを読むと心をマッサージされたような気分になります。
癒しのマッサージではありません。自分が流されずにこれは貫いていこうと思っていることを「そうだ、それは大事だ」と言ってもらえるような、そういう感じがするのです。
今回は、わたしがヨガの練習やインド哲学の学び時に思う「思考力が弱ることと五感の刺戟に奔放になることはイコールか」という問題について、『うちの犬の口癖は、「ただやないでぇ」である。』というトピックの中におもしろい答えを見つけた気がして、すごく楽しくニヤニヤしながら読みました。
わたしは犬や猫を飼いはじめた人の話を聞くのが大好きなのですが、このトピックにはそういうおもしろさがありました。たまに「理性って、思考力の筋肉でできているのではないかしら」と思うのだけど、森博嗣さんの文章を読んでいると、それが少し確信に近いような気がしてくる。
ほかの著作にも共通するけれど、わたしは「仕組みがわからない便利って、便利なのか? 誰都合?」と思っているので、それも『簡単になったなあ、と素直に喜べない理由。』というトピックにある
メンテナンスフリーというのは、素人にはメンテナンスができない、という意味かもしれない。
という言葉を読んで、ほっとした。わたしは女性の友人に、たぶん頼みやすいという理由でネットのサービスについていろいろやり方を聞かれるのだけど、こうなるとぜんぜん便利ではないから。
ほかには、特にこれらが好きです。
- 何故うちの犬は空を飛べるのか。
- 感動を与えたいって、何様のつもりか。
- 励ますことが苦手だが、励まされることはもっと苦手だ。
- 相手の印象を常に修正できない人は、きっと損をしている。
- 閉塞感って何?
きっとこれはわざとだわ、と思う誤植っぽいフレーズも含めて楽しく読みました。
先日ジェーン・スーさんの本の感想にもまったく同じことを書きましたが、前後の文脈の読めない人が増えている現代のなかで、届くべき人に向けて非常に巧みな表現をされていると思います。
身体を動かして考える人の文章は、やっぱりおもしろい。きのう発売の本です。フレッシュよ〜。
▼紙の本(装丁が今回はひときわ素敵。ウォーリーが居そうな、辻説法みたいな細かい絵!)
▼Kindle版