うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

チャンス 太宰治 著


自論と経験談による恋愛論。オトコの本音炸裂でおもしろい! こんなに本音炸裂なのに、ラストはロマンチックって、どういうことなんだ! またしてもヤラレタ。
わたくし、少子化の問題などなど昨今のヒューマン・ビーイングにまつわることの全ては、この「チャンス」で語られている冒頭の主張に帰結すると思います。
いちおう女性なので女性目線でも読むのですが、このへんのボヤきとか、たまんないです。

私の経験に依れば、女があんな事を言う時には、たいてい男がふられているのだと解して間違い無いようである。「愛する」もクソもありやしない。お兄さまだなんてばからしい。誰がお前のお兄さまなんかになってやるものか。話がちがうよ。

「話がちがうよ」って、ほんとそうだよね。と思うんだけど「間違い無いようである。」って、そこ曖昧なんだ〜。かわいい。



なんというグロテスク。「恋愛は神聖なり」なんて飛んでも無い事を言い出して居直ろうとして、まあ、なんという図々しさ。「神聖」だなんて、もったいない。口が腐りますよ。まあ、どこを押せばそんな音ねが出るのでしょう。色気違いじゃないかしら。とても、とても、あんな事が、神聖なものですか。

グ、グルジー! グルジのこと太宰さんが図々しいっていってるよー! 口が腐るってー。でもわし、太宰さんのいうとることも、ちょっとわかるー。



稲妻。あー こわー なんて男にしがみつく、そのわざとらしさ、いやらしさ。よせやい、と言いたい。こわかったら、ひとりで俯伏したらいいじゃないか。

なんだろうなぁ。漫画のフキダシのようなこの語調による笑いのセンスが、たいへんな技術。句読点の打ち方とか、絶妙なんだよなぁ。



いつか電車で、急停車のために私は隣りに立っている若い女性のほうによろめいた事があった。するとその女性は、けがらわしいとでもいうようなひどい嫌悪と侮蔑の眼つきで、いつまでも私を睨んでいた。たまりかねて私は、その女性の方に向き直り、まじめに、低い声で言ってやった。
「僕が何かあなたに猥褻な事でもしたのですか? 自惚れてはいけません。誰があなたみたいな女に、わざとしなだれかかるものですか。あなたご自身、性慾が強いから、そんなへんな気のまわし方をするのだと思います。」

昔っから、女性はこういうことをしていたんだなぁというのと、男性はこのくらい言っていいよと思うこともあるのだけど、でも実際言ったという話を武勇伝のように語られるとヒく(笑)。



リアルで会ったらめちゃくちゃ面倒くさそうな人だけど、こういう究極の本音はおもしろい。週刊誌的少女マンガ風文学とでも言ったらいいのかな。少年漫画ではなく少女漫画。この人おもしろいなぁ。師に尊敬を抱くような感情が全くわいてこない(笑)。


▼ウェブで読む
太宰治 チャンス - 青空文庫


Kindle

チャンス
チャンス
posted with amazlet at 14.07.11
(2012-09-27)