社会問題のナマナマしいところにスススーッと切り込んでいく異色短編集。
売ってはいけない未来のカメラを売る「ヨドバ氏」から展開するストーリーのほか、ドロリとした後味の話が続きます。
ネタバレしないよう、ひとことで感想を書いてみます。
- 値ぶみカメラ
男性の価値を表示してくれるカメラを女性が手に入れる話。これあったらあったで頭が痛いと思う経験があるかないか、人によって分かれそう。うふふ。
- 女には売るものがある
ものすごく短いんだけどものすごく深いフェミニズムのお話。これはすごい。
- 同録スチール
オトコの夢、なのかな。あこがれの女の子とデートできるかできないか。友達の裏切りがナマナマしい。
- 並平家の一日
日本人の平均化、画一化を確認する実験の話。すごい話だけど実際ちょっと現実。
- 夢カメラ
むかしアイドルがドラマでやってたやつ。「潜在意識は治外法権」てのはほんとうにそのとおりだ。
- 親子とりかえばや
親子版の「転校生」。これが感動オチじゃないバージョンになるとしたら、どうなっちゃうんだろう。
- 懐古の客
インドやスリランカへ行ったときの気分を思い出す。
- パラレル同窓会
誰でも一度は思うこと、かな。保守的な選択を多くしてきた人に刺さるお話。
- コラージュ・カメラ
いま少し現実っぽくなっているので、「いいのかこれ…」とリアルにドキドキする。
- かわい子くん
すてきな恋のお話。読むといい気分になる。
- 丑の刻禍冥羅
丑の刻カメラと読む。呪いのお話。やっぱりこんなの作っちゃダメだよね〜 というつぶやきを描き起こした感じ。やっぱりこういうのも描きたくなるよなぁ、と思う。完全大人向け。
- ある日……
概念についての話。ヴェーダーンタ哲学。
- 四海鏡
大人のエゴが錯綜する話。エゴと「価値」の話。
- 鉄人をひろったよ
閉塞感のなかで暮らすのは苦しいけど、それを取り除く存在も残念ながらもはや居場所がないのだよ。という深すぎる話をこんなに短いストーリーで描けるってすごい。
よく時代が変わったといわれるけど、日本人の悩みの種やその発芽方法は、いうほど変わっていないと思いました。
最近世の中がギスギスしてきたって? 昔からじゃないか。という声が聞こえてきそう。
安孫子先生の「笑ゥせぇるすまん」もおもしろいけど、こっちもおもしろかった。
「世にも奇妙な物語」などが好きな人は、ぜひ。