これはすごいな…。わたしはニュースを見るとき、いまは基本的に情報を信用しずらくなっているから「これは誰の視点か」「これは誰が得をする伝え方か」「どんな感情を煽る演出になっているか」というのを類推しながら見るのだけど、この小説はものすごくよいトレーニング材料になります。
情報が雑になってきた昨今は、それに振り回されていちいち社会不信や人間不信に陥っていたらメンタルがもちません。そのつど淡々と考える力が心身の健康と直結する。そういう意味で、この小説は読むことが試練になる。
サイコパスのパワハラ話なのか、権力者のセクハラ話なのか、あるいはその掛け合わせなのか。ぜんぶなのか。
このパワー戦争の答えは語り部が握っているの?
もし市原悦子の演じる家政婦の性格がめっちゃ策士だったら
こんなドラマだったら、きっと家事で疲れた夕食後の時間帯には見ない。そもそも市原悦子を信用できる事が前提。
この「地獄変」は、その市原悦子的存在がクセモノ。
一度目の読書でいくつかの仮説を想起させつつ「これは再読しないとわからないやつだ」と悟らせ、二度三度読むと気づく。再読で見えてくるものがさらにある。一度目に読んだときは普通に恐ろしい話で、二度目に読むとこれは実社会でもある種類の地獄だよねという恐ろしさがある。
どうにも感想の書きにくい、自分の思い込みを何度も疑うことを求められる小説だけど、ひとつ確信したのは、わたしはリスクをとって手足を動かしてナマナマしく生きる人が好きだということ。そういうことに気づかせてくれるお話でした。
- 作者: 芥川竜之介
- 発売日: 2012/09/27
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