うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

日々是好日(映画)

茶道を長くやっている女性のお話でした。
畳の部屋と庭の映像を見ていると心が安らぎます。それと並行して描かれる日常、そこから侵食してくる心の乱れと波紋にはリアルな苦しみがあって、継続する練習に意味を持たせてくれるのは「長い自分の人生」であって「その場かぎりの自意識」ではない、そんなことをしみじみ思わせてくれます。


主人公が日常で自暴自棄になるツラい出来事に耐えているとき、それが茶道の所作に出たことを別のニュアンスで指摘され、その状態そのものと自己を同一化して「だからここにも居場所がない」と考えてしまうネガティブ思考の流れは、わたしにも経験があること。
こういうことは小さくたくさんあっていちいち覚えていないのだけど、それを映画のなかで固まりにして観せられて、息が止まるような苦しさ。だけど視覚的にやさしいから、そんなにはきつくない。

 


茶道は、もともと男性社会で開発されたものが、現在ではおもに女性たちによって存在価値が更新し続けられています。人生に寄り添うように存在している「道」をスケジュールに組み込むことで、救われることがたくさんある。

実生活上の心は嵐のなかにいたとしても、それを乗り越えたい、成長したいという気持ちの受け皿になってくれる。そういうものは、伝統的な形のなかにありながら、時代とともに定義が少しずつ変わっても残っていく。

こういうところがヨガと似ているな、と思いました。

 


ふと突然湧き上がってくる古い感情の存在や、五感の優勢が入れ替わる時の感覚、意味づけをしたくて頭でっかちになる時の余裕のなさ、そういう心の経験が物語の中に美しい映像とともに散りばめられていて、茶道にまったく興味がないのに繰り返し何度も観たくなり、実際三回観ました。

 

同じ亭主と客でもその日のことは人生に一度限りと思うことと、千利休の時代を重ねて語られる場面があることで、現代社会のなかで自ら居場所を作り続けなければいけない人たちへの応援にもなっていて、世の中の価値観が変わっていくなかで観るのにすごくよい映画でした。
みなさまもぜひ。